【ゲノミクス】オーストラリアの地域多様性を解明する手掛かりとなる先住民のゲノム
Nature
2017年3月9日
100点以上のオーストラリア先住民(アボリジナル)のミトコンドリアゲノムの解析が行われ、オーストラリアでの定住は、東西両海岸に沿った一度の急速な移動によってなされ、その流れがオーストラリア南部に到達したのが早くて49,000年前頃だったことが明らかになった。この新知見は、オーストラリア先住民の集団が明確に区分された地域内で約50,000年にわたって定住を続けたことを示唆している。この研究成果を報じる論文が、今週掲載される。
(かつてサフールという1つの陸塊だった)オーストラリアとニューギニアに初めてヒトが住みついたのは約50,000年前のことだったことが考古学的証拠に示されている。しかし、オーストラリア国内において言語と表現型の多様性が極めて大きいことの背後にある過程については解明されていない。
今回、Alan Cooperの研究チームは、1920~1970年代に3つのオーストラリア先住民のコミュニティー(サウスオーストラリア州の2つとクイーンズランド州の1つ)で111人から集めた毛髪試料からミトコンドリアゲノムを抽出した。Cooperたちは、このミトコンドリアゲノムを解析して、ヨーロッパ人が定住するまでのオーストラリア先住民の集団間の遺伝的関係と歴史的関係を詳細に再構築した。その結果、オーストラリア先住民がオーストラリア北部に上陸してから東西両海岸沿いに急速に移動して、約49,000~45,000年前にオーストラリア南部で出会ったことが分かった。ミトコンドリアDNAの多様性のパターンには地域性が色濃く見られ、このことは、オーストラリア先住民が、約50,000年前の時点で、著しい文化的変化と気候変動(例えば、最終氷期極大期の広範囲にわたる乾燥化と寒冷化)があったにもかかわらず、集団ごとに明確に異なった地域で定住していたことを示している。
doi:10.1038/nature21416
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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