画像化法:MRI用トレーサーの改良
Nature Communications
2017年1月11日
MRIの検出感度を高めるトレーサー分子の寿命を従来の数秒から数時間まで延ばす方法について報告する論文が掲載される。既存のMRI用トレーサーは使用場所で調製されているが、この新しい手法によって、トレーサーを大量に調製してから病院に搬送できるようになる。
この新しいプロセスは、「動的核スピン偏極法」と呼ばれ、磁気共鳴画像(MRI)装置のトレーサー分子として従来品の1万倍の感度を有する「超偏極」トレーサー分子を調製できる。ところが、超偏極トレーサーの実用化は、短い偏極寿命(30~60秒)のために制約を受けてきた。このトレーサーの使用直前に複雑な手順を踏んでトレーサー調製を行わなければならないのだ。
また、現行の方法では、トレーサー分子を別の偏極剤と混ぜる必要がある。そうすることで、プロセスの効率を高めることができるが、この密接な接触のために偏極寿命を短縮する相互作用が起きてしまう。今回、Sami Janninの研究チームは、もっと間接的な方法を用いることで、トレーサーと偏極剤を微視的に分離した状態に置きつつ、超偏極を生成できることを示している。この新しい方法は、破壊的な相互作用を回避するものであり、Janninたちはこの方法を用いて、5時間超の寿命を有する超偏極トレーサーの調製と保管、輸送を実証した。
現在のところ、新しい方法で実現される偏極レベルは、現行の方法より低く、Jannin たちは、臨床研究で最も一般的に用いられる超偏極トレーサー(ピルビン酸ナトリウム)の輸送の実証に成功していない。しかし、この新しい方法の開発に成功すれば、超偏極トレーサーを1つの施設で集中的に製造して、必要な場所に輸送できるようになり、科学的な応用や臨床応用における実用性が高まる可能性がある。
doi:10.1038/ncomms13975
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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