Research Press Release

【生態】サンゴ礁の将来を照らす明るい点

Nature

2016年6月16日

全世界のサンゴ礁地帯の中で魚類のバイオマス量が予想を大きく上回っている地点と大きく下回っている地点を明らかにした研究結果を報告する論文が掲載される。この新知見は、これまで用いられていなかった環境的要因と社会経済的要因を考慮に入れた学際的手法によって得られたもので、世界的なサンゴ礁の減少に取り組む上で役立つ可能性がある。

今回、Joshua Cinnerたちは、全世界2,514か所のサンゴ礁のデータをまとめ、サンゴ礁魚類のバイオマスが、環境変数(水深、生息地、生産力など)と社会経済的駆動要因(市場、豊かさ、ガバナンス、人口など)とどの程度関連しているのかを定量化するためのモデルを開発した。このモデルでは、都市中心部との相互作用を測定する指標がサンゴ礁魚類のバイオマスと最も強く関連していた。また、今回の研究では、世界のサンゴ礁のいわゆる「ブライトスポット」15箇所と「ダークスポット」35箇所が同定された。サンゴ礁魚類のバイオマス量が、このモデルの固有の予想値から標準偏差の2倍以上上回っているサンゴ礁地帯がブライトスポットと定義され、標準偏差の2倍以上下回っているサンゴ礁地帯がダークスポットとされた。意外だったのは、生態系資源の利用度が高い人口密集地域がブライトスポットに含まれており、逆に、ハワイ諸島北西部の一部のような遠隔地がダークスポットと同定されたことだ。

Cinnerたちは、それぞれのサンゴ礁地帯で地元の専門家を対象とした調査を行った後、ブライトスポットの特徴として、強力な社会文化的制度、管理に対する高度の地域参加、海洋資源に対する高い依存性、良好な環境条件(例えば、深海の隠れ場所の存在)を挙げた。一方、ダークスポットの特徴としては、漁業の集約化を進める技術だけでなく、近年の環境ショック(例えば、熱帯サイクロン)の発生歴が挙がっている。

以上の結果は、漁業におけるガバナンスの強化によって今後のサンゴ礁保全を促進できる可能性を示唆している。

doi:10.1038/nature18607

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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