【天文学】ロゼッタ探査機に搭載された顕微鏡で詳しく解明された67P彗星の塵粒子
Nature
2016年9月1日
67P/チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の塵粒子には、単一粒子から大きな多孔質の塊までさまざまな形と大きさのものがあることが明らかになった。この結果は、彗星周回衛星ロゼッタに搭載された世界初の宇宙空間で操作される原子間力顕微鏡MIDASによる観測結果に基づいており、初期太陽系の形成過程に関する手掛かりとなる可能性がある。その詳細を報告する論文が、今週掲載される。
彗星には、太陽系の誕生時(惑星と彗星が塵粒子の衝突によって形成された時期)の物質がほぼ原始状態で保存されている。そのため彗星は、これまでにin situで観察されたことのない、ほぼ原始状態の塵粒子の微細構造を観察できる希少な機会となっている。
今回、Mark Bentleyたちは、2014年11月から2015年2月にわたってMIDAS(マイクロイメージングダスト分析システム)によって収集された彗星67Pの彗星塵の大きさ、形状、テキスチャー、微細構造のin situ測定結果について報告している。Bentleyたちは、この彗星塵が、より小さな細長い粒子の凝集体であることを明らかにしている。これらの粒子は、さまざまな大きさ(数十マイクロメートルから数百ナノメートルまで)とさまざまな形状(単一粒子から大きな多孔質の凝集粒子まで)のものがあった。
また、Bentleyたちは、114個の塵粒子の伸長度を計算し、それが惑星間塵粒子の伸長度の推定値に近いことを確認した。この結果は、この塵粒子が彗星の構成ブロックのほんの一部にすぎない可能性があるとする学説を裏付けている。 この論文に関連するLudmilla Kolokolova のNews & Views記事には、「Bentleyたちの研究結果は、彗星塵と太陽系をはじめとする惑星系の誕生に至る過程に関する我々の根本的な理解を進めるものである」と記されている。
doi:10.1038/nature19091
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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