Research Press Release
【人間行動】社会規範の強制がうまく行かない理由
Nature Communications
2016年11月2日
社会規範の違反があった場合に違反の程度(例えば、ゴミのポイ捨ての程度)が大きい場合と小さい場合で人間の応答が変わらないことを明らかにした論文が、今週掲載される。重大な違反行為に対する処罰を軽微な違法行為より厳しくすべきだという考えは、違反者による報復に対する恐怖が増すことで相殺されていたことが今回の研究で示唆されている。
今回、Loukas Balafoutasたちは、ドイツの駅で軽微な違反行為(コーヒー用の紙コップのポイ捨て)と重大な違反行為(コーヒー用の紙コップと何かが入っている紙袋のポイ捨て)を演出し、800回以上の試行によって旅行者の反応を記録した。これらの試行で、違反の大小は、ポイ捨てをした者が叱責される可能性や叱責の程度に影響を及ぼさなかった。
旅行者の行動の観察結果と対照的だったのが、同じ場所で独立して実施されたアンケート調査で、重大な違反に対する回答者の否定的感情が強くなり、重大な違反の方がより厳しく叱責すべきだと回答者は感じていることが判明した。ところが、こうした反応を示した回答者が、現実の状況下でこの違反行為を罰することには消極的であることを認め、その理由として、社会規範の違反の程度が大きくなるにつれて違反者による報復のリスクが高くなると考えられることを挙げた。
doi:10.1038/ncomms13327
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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