Research Press Release

収縮した透明の齧歯類を作り出す究極のDISCO

Nature Methods

2016年8月23日

ラットやマウスなどの動物の全身を透明化して、無傷の神経系や丸ごとの器官を体内のあるがままの位置で画像化することができる技術についての報告が掲載される。それは動物の全身の画像化を可能にする初めての組織透明化法であり、大きな器官系の構成の研究にさまざまな生物医学的応用法がある。

これまで、動物の深部組織の細胞構造を研究するための技術は、組織を薄く切ってその切片を画像化することによるものであった。しかし、中枢神経系のように、高度に複雑で形状が不均一な細胞の研究は、組織を本来の状態に保ったまま行うのが最適である。組織透明化法はこの要求を満たすが、(齧歯類の体のように)大きな試料の画像化にはなお限界がある。最高レベルの組織透明性を実現する方法3DISCO(3D imaging of solvent-cleared organs;溶媒で透明化した器官の三次元イメージング)は標本サイズの大幅な縮小も実現するが、動物体内で発現したあらゆる蛍光タンパク質を急速に退色させる。

Ali Erturkたちはこうした限界を克服した改良法を開発し、uDISCO(ultimate[究極の]DISCO)と命名した。uDISCOは、蛍光タンパク質を数か月にわたって保持する傍ら、器官と齧歯類の体を透明化して、そのサイズを最大65%縮小させた。uDISCOを利用すると成体齧歯類の全身が画像化され、長距離(7 cm以上)の神経接続および血管系が描き出された。その方法は、巨視的スケール(皮質および海馬の構造など)でも微視的スケール(個々の細胞など)でも、脳の構造的完全性を変化させないことが分かった。最後に研究チームは、全マウスアトラスおよびデータベースの開発により、研究に必要な動物の数を減少させるのにその方法が有用である可能性を示唆している。

doi:10.1038/nmeth.3964

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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