気候モデルの予測をチェックする
Nature Climate Change
2016年5月31日
気候システムの全構成要素の間のフィードバックと相互作用(気候システムの動態)が気候モデルにどの程度取り込まれているかを評価する統計的方法を用いることで、気候モデルによる予測結果が的確かどうかを検出できることが明らかになった。今週のオンライン版に掲載される研究論文は、気候モデルによる予測の改善に役立ち、この予測を考慮に入れた意思決定の信頼性を高める上で役立つと考えられる。
今回、Michael Rungeたちは、単一の気候モデルや複数の気候モデルの組み合わせによる予測結果が実際の観測データと適合していないことを検出する方法をそれぞれ開発し、2つの事例(オナガガモの生息域変化、北極海氷の予測)に適用した。オナガガモの事例では、北米の繁殖集団が観察された緯度と2つのモデルによって予測された緯度の比較が行われた。Rungeたちの分析では、これらの方法を用いることで実際の観測より20年早い1985年の段階で繁殖地域の変化を検出できたと考えられることが明らかになった。
第2の事例では、これらのモデルが9月の北極の海氷面積を正確に予測できるかどうかを調べた。Rungeたちは、高排出シナリオで11の気候モデルを分析したが、この分析結果からは、観測された気候システムの動態が現行の気候モデルの組み合わせに正確に表現されており、従って、正確な予測を行えることが示唆されている。しかし、一部のモデルについては、単体で用いられた時に観測結果との適合度が急激に変化するものがあり、今後そうしたモデルを組み合わせて用いると予測が外れるリスクが生じる可能性のあることをRungeたちは指摘している。Rungeたちは、2055年9月に北極域から海氷がなくなることを予測する複数の気候モデルをもっと重視すべきだと結論づけている。
doi:10.1038/nclimate3041
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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