【健康】腸内微生物から免疫療法誘発性大腸炎を予測できる可能性
Nature Communications
2016年2月3日
がん免疫療法の副作用で大腸内壁の炎症を症状とする大腸炎の発症リスクが、検便によって予測可能であることが明らかになった。この研究成果を報告する論文が、今週掲載される。がん免疫療法では、患者自身の免疫細胞を誘導して腫瘍を攻撃させるのだが、こうした患者の免疫応答は患者の健康な組織にも向けられるので、大腸炎のような自己免疫疾患が起こる。がん免疫療法の副作用リスクの高い患者が事前に分かれば、実際の副作用を最小限に抑えることができると考えられている。
大腸炎に関しては、微生物種の構成の変化との相関が判明していたが、ヒトにおける因果関係を確立することは難しかった。臨床試験を実施する必要があるものの、今回の研究では、免疫療法誘発性大腸炎になりやすい患者の特定につながると考えられるバイオマーカー候補が特定された。
今回、Eric Pamerたちは、黒色腫の患者34人から採取した大便検体に含まれる微生物と代謝物の構成を調べた。これらの検体は、免疫療法が実施される前の段階、つまり、患者が大腸炎になっていない時点で採取された。解析結果からは、患者の3分の1が免疫療法を受けてから数週間以内に大腸炎を発症し、大腸炎を発症した者は、免疫療法実施前にバクテロイデス門の腸内細菌と腸内細菌が産生する特定の代謝物を持っていなかったことが明らかになった。
今回の研究は、免疫療法を受ける患者を大腸炎から守るためにバクテロイデス菌と特定の細菌代謝物を利用できる可能性を示している。この研究成果は、がん免疫療法が実施された後の炎症性合併症のリスクを下げるための介入法の実現につながるかもしれない。
doi:10.1038/ncomms10391
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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