マウスの神経回路を照らす
Nature Methods
2015年8月18日
マウスの神経回路を光遺伝学的に(光を媒介として)操作するためのワイヤレスで埋め込み式の完全体内型装置についての報告が、今週のオンライン版に掲載される。このツールは材料の入手が容易であり、異なる神経回路を光誘導的に活性化させて歩行行動、疼痛知覚、および遺伝子発現を調節することに用いられた。
光遺伝学は、光に対して遺伝学的に感作された特定種の細胞(通常はニューロン)の正確な刺激を可能にする。自由に行動する動物の神経回路機能を光遺伝学で研究する場合には、光を届ける装置がその行動を制限しないことが重要である。同様に、末端のニューロンに光遺伝学的な作用を及ぼすには、小型で軽量の光源が必要である。
このため、Ada Poonたちは、埋め込み式の光源を開発した。この装置は重量が20~50mgと、過去に報告されている装置と比較して大幅に小型軽量化されている。この光源はマウスの脳内、あるいは肢や脊髄の標的ニューロンの近傍に埋め込むことができる。給電はワイヤレスで行われ、青色LEDを用いて十分な強度の光を発生させることにより、光に反応するように遺伝子組換えが行われた細胞を刺激して、任意のニューロン集団の神経活動を誘発する。
この装置は小型であることから、神経活動の長期的な操作が可能となり、行動神経科学に新たな道が開かれると考えられる。また、光を届ける装置が大きすぎたためにこれまで光遺伝学的な方法を利用することができなかった神経回路も、この装置によって研究対象になる可能性がある。
doi:10.1038/nmeth.3536
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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