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ロボット工学:共有制御によりバイオニックハンドの器用さが向上

Nature Communications

2025年12月10日

Robotics: Shared control boosts dexterity in bionic hands

Nature Communications

自律型義手と使用者の間で制御を共有することで、バイオニックハンドの有用性を向上させられるかもしれないことを報告する論文が、オープンアクセスジャーナルNature Communications に掲載される。この手法は、使用者の認知的負担を軽減しつつ、義手の器用さを向上させることが示されている。

市販のバイオニックハンドの義手は、切断患者の手機能回復を支援するため、手の動きを再現できる。しかし、操作の難しさとそれにともなう認知的負荷が、多くの利用者にとって障壁となっている。器用さを向上させる試みとして、義手の把持力を制御するセンサーの使用があるが、異なる作業への適応は依然として困難である。代替手段として、自律制御と人間制御(筋電信号や神経信号を用いた)の切り替えが提案されているが、過去の研究では両者の切り替えが把持能力を制限することが示されている。人間と機械の制御を継続的に共有することで機能性が向上し、使用者にとって操作がより直感的になると考えられている。しかし、この実現は困難であった。

Marshall Troutら(ユタ大学〔米国〕)は、市販義手(TASKA Hand)の指先に近接センサーと圧力センサーを開発・統合した。これに自動モデルを組み合わせ、皮膚や筋肉からの電気信号から解読した使用者の意図と、センサーデータから物体距離を推定するよう訓練されたアルゴリズムによる機械の意図を継続的に融合させる仕組みを実現した。このシステムは、健常者9名と切断者4名を対象に、卵などの壊れやすい物体の保持・移動、紙の拾い上げ、およびマグカップからの飲用など、複数の把持タイプと実生活での作業で検証された。制御アルゴリズムは物体距離を正確に予測し、自律的な指位置決めを可能にした。使用者はまた、人間単独または機械単独の制御と比較して、把持力と位置をより容易に調節でき、精度も向上した。使用者からは、このデュアル制御システムにより日常的な作業にともなう認知的負荷が軽減され、身体的負荷の増加も生じなかったとの報告があった。

本手法の幅広い潜在的な使用者層における長期的な適用可能性を評価するには、さらなる研究が必要である。しかし、本研究は、使用者と機械の間のデュアル制御システムが、義手の使用者にとって制御性の向上と負担軽減への潜在的な道筋を示唆している。

Trout, M.A., Mino, F.R., Olsen, C.D. et al. Shared human-machine control of an intelligent bionic hand improves grasping and decreases cognitive burden for transradial amputees. Nat Commun 16, 10418 (2025). https://doi.org/10.1038/s41467-025-65965-9
 

doi: 10.1038/s41467-025-65965-9

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