計算機科学:人工知能を利用して効率の高いアルゴリズムを発見する
Nature
2022年10月6日
Computer science: Artificial intelligence boosts algorithm efficiency
ディープマインド社が考案した深層強化学習法を用いた行列乗算アルゴリズムの自動発見について報告するAlhussein Fawziたちの論文が、今週、Nature に掲載される。この深層強化学習法では、現在最もよく知られているアルゴリズムだけでなく、人間やコンピューターが設計した従来のアルゴリズムよりも高速な新しいアルゴリズムが迅速に再発見される。この研究知見は、既存の計算タスクをもっと効率的に解く方法を発見するという深層強化学習法の可能性を浮き彫りにしている。
基礎的な計算操作を実行するアルゴリズムの効率が向上すると、数多くの計算の全体的な速度が影響を受けることがある。この論文では、重要な原始的な計算タスクである行列乗算のアルゴリズムを自動発見するための深層強化学習法について説明されている。行列乗算は、膨大な量の計算において日常的に使用されている。このシステムは、AlphaTensorと名付けられ、2つの行列(数字の配列)を乗算する最適な方法を発見することを目的としたゲームをプレイするという課題が与えられている。このゲームは、伝統的なゲーム(チェス、囲碁など)よりもはるかに難しく、場合によってはアクションの回数が約1兆回も多く必要とされる。AlphaTensorは、既知のアルゴリズムを特定し、それによってシステムが機能することを証明しただけでなく、全く新しいアルゴリズムも発見した。また、こうしたアルゴリズムの発見によって、50年以上にわたって相当量の研究が行われたにもかかわらず改良されることのなかったアルゴリズムの改良も実現した。さらにAlphaTensorを最適化することで、特定の種類のコンピューター上で特定の状況下で特に有効に動作するアルゴリズムを発見できるかもしれない。
Fawziたちは、AlphaTensorのいくつかの限界も指摘している。例えば、AlphaTensorが必要とする事前定義されたコンポーネントの一部のために効率的なアルゴリズムの一部が見逃されてしまう可能性があるのだ。しかし、AlphaTensorによって発見されるアルゴリズムは、乗算アルゴリズムを使用する計算タスクを改良できるだけでなく、強化学習を使用して既知の問題に対する予想外の新しい解法を発見する過程を示せるかもしれない。
doi: 10.1038/s41586-022-05172-4
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