注目の論文

直近の金融危機を経た世界で二酸化炭素排出量が再び急増し始めた

Nature Climate Change

2011年12月5日

Rapid growth in CO2 emissions after recent financial crisis

化石燃料の燃焼とセメント生産による世界の二酸化炭素排出量の速報推定値によれば、直近の世界金融危機(GFC)後の2010年の二酸化炭素排出量が記録的な伸びを示している。Nature Climate Change(電子版)に掲載されるCorrespondenceでは、世界金融危機の際に減少した二酸化炭素排出量が、その後、再び増加し、9 Pg C以上の高レベル(前年比5.9%増)に達したことが指摘されている。 過去においては、金融危機が起こると、各国は、エネルギー低消費型の活動を支援して、経済生産高を維持し、その結果、地球上の化石燃料からの二酸化炭素排出量の軌跡に重要な変化が生じた。このG PetersたちのCorrespondenceでは、過去の経済危機は長期間にわたり、その結果として二酸化炭素排出量の減少も長く続いたのに対して、2008〜2009年の世界金融危機の場合には、国内総生産の減少は短期間で終わり、世界の二酸化炭素排出量は2010年にはすばやく増加に転じたとする見方が示されており、Petersたちは、この急速な増加の原因として、エネルギー価格の急落と景気の急速な回復を促すための大型政府投資を想定している。 その一方で、Petersたちは、開発途上国の二酸化炭素排出量が2000〜2007年の平均排出量を下回っていることから、二酸化炭素排出量が急増したもう1つの原因として、中国、インドなどわずかな数の主要新興経済国の高い成長率を挙げている。世界金融危機の際には、新興経済国が国内産業を支援し、国内の経済成長のテコ入れを図ったため、国際貿易が大きく落ち込んだ。こうした落ち込みは、多くの貿易に依存する諸国で顕著だったが、経済の他の分野における活動の活発化によって相殺された。世界金融危機が過ぎ去った後もこの国内的安定は続き、対外貿易も高いレベルに戻ったため、2009年には、開発途上国のエネルギー消費による二酸化炭素排出量が初めて先進国を上回った。Petersたちは、この傾向が今後も続く可能性が高いと考えている。 最後に、Petersたちは、地球上の化石燃料と工業による二酸化炭素排出量の増加を反転させるには、その背後にある要因のすべてに見られるトレンドを同時に抑制する必要がある、という結論を示している。

doi: 10.1038/nclimate1332

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