注目の論文

気候変動:全世界の都市部の緑地に対する脅威

Nature Climate Change

2022年9月20日

Climate change: Potential global threat to city greenery

都市部に生育する樹種の最大3分の2は、すでに安全域(すなわち気候耐性と考えられるもの)を超えた気候条件に遭遇している可能性があることを報告する論文が、Nature Climate Change に掲載される。この知見は、世界164都市に生育する高木種と低木種(合計3129種)について気候変動によるリスクを調べる研究で得られたもので、都市部の植物を保護し、それに関連した生態系サービスを確保する取り組みの優先順位付けに役立つかもしれない。

都市部の森林が、人間の健康と幸福感に関連したサービスの提供だけでなく、気候変動対策においても重要な役割を果たしていることに関心が高まっている。しかし、こうしたサービスを提供する能力は、気候レジームの変化に直面しても都市の森林が存続することに依存している。

今回、Manuel Esperon-Rodriguezたちは、78か国164都市の高木種と低木種(合計3129種)の気候によるリスクを現在と将来の気候条件下で評価し、これらの樹種の56%がすでに年平均気温の安全域を超える気候条件に遭遇しており、65%がすでに年間降水量の安全域を超えていることを明らかにした。そして、中排出シナリオ(RCP 6.0、温室効果ガス排出量が2080年頃にピークに達し、その後減少する)では、2050年に、これらの樹種の76%が年平均気温の変動予測値のリスクに直面し、68%が年間降水量の変動予測値のリスクに直面するようになると予測された。このような予測は、人口の変化や都市化の変化による影響可能性が考慮に入っていないため、控え目な予測になっている可能性が高いとEsperon-Rodriguezたちは述べている。都市部の樹種が直面する気候によるリスクは、低緯度の都市や気候変動に対する脆弱性が高く、準備が整っていない国々(ノートルダム世界適応イニシアチブのスコアが低い国々)、例えばインド、ニジェール、ナイジェリア、トーゴなどで特に高いことが明らかになった。

Esperon-Rodriguezたちは、全世界の都市部の森林を保護し、こうした社会生態学的システムがもたらす利益を長期間享受するためには、早急な行動が必要だと結論付けている。

doi: 10.1038/s41558-022-01465-8

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