注目の論文

環境:労働者虐待と違法漁業のリスクを世界規模で評価する

Nature Communications

2022年4月6日

Environment: Global risk of labour abuses and illegal fishing practices assessed

世界の海洋漁業部門における労働者虐待のリスクは、これまで考えられていたよりも広範囲に及んでおり、持続不可能な漁業活動に関連していることを示唆した論文が、Nature Communications に掲載される。

労働者虐待(強制労働など)と違法・無報告・無規制の漁業(海洋保護区での漁業など)は、世界の漁業部門で一般的なものと考えられている。これらの問題に取り組むことは企業や政府の優先課題になっているが、これらの問題が違法性を帯びているため、その規模と範囲を評価し、問題が発生している港湾や漁業活動を特定することが困難になっている。

今回、Elizabeth Seligたちは、世界中で労働者虐待や違法・無報告・無規制の漁業が行われるリスクにさらされた地域を定量化するための機械学習モデルを構築した。Seligたちは、研究機関、企業、人権団体、政府の専門家に対して、港湾に関連する違法・無報告・無規制の漁業のリスク評価を依頼し、その評価結果を2012~2019年の800万隻以上の漁船の漁業活動をマッピングするための国際的な漁船追跡データベースと組み合わせた。その結果、調査対象となった港湾の57%と、それらの港湾を目的地とする漁業航海の82%が、労働者虐待と違法・無報告・無規制の漁業のリスクと高度に相関し、関連していることが分かった。Seligたちは、ペルー、アルゼンチン、フォークランド諸島、西アフリカの沖合で、労働者虐待と違法漁業の両方のリスクが高い海域を特定した。また、Seligたちは、海上でのリスクが高い漁船として、登録国(旗国)のガバナンスが低く、汚職規制が不十分なこと、旗国以外の国に所有されていること、旗国が中国の漁船であることを挙げている。Seligたちは、リスクの高い船舶は、違法漁業防止寄港国措置協定(違法・無報告・無規制の漁業を対象とした協定)を批准した国の港湾に寄港しにくく、港湾での滞在期間も短くなりやすいことを指摘している。

Seligたちは、今回の知見によって、主要なリスク海域が特定され、これらの問題に対する監視と取り締まりを拡大するための協調的行動の必要性が強調されたという見解を示している。

doi: 10.1038/s41467-022-28916-2

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