注目の論文

環境:空気中の水分を収集する性能をうまく利用する

Nature

2021年10月28日

Environment: Tapping into the potential of harvesting water from the air

太陽エネルギーを動力源として空気中の水分を収集する装置によって、約10億人に安全な飲料水を提供できる可能性のあることが、仮説上の装置をモデルとした全球的評価によって示唆された。この知見について報告する論文が、Nature に掲載される。こうした知見は、最近登場した水分収集技術や今後の水分収集技術の設計にとって有益な情報となる可能性がある。

世界では約22億人が安全な飲料水を利用できず、そうした人々が最も多いのが、サハラ以南のアフリカ、南アジア、中南米である。水不足の解決策として提案されているのが空気中水分収集装置であり、2種類のものが存在する。受動的な水分収集装置は、気象条件のみに依存し、すでに凝縮した露や霧を収集する。これとは対照的に、能動的な水分収集装置は、湿度が高い夜間に収集した水分を太陽エネルギーを利用して凝縮するか、あるいは連続サイクルで作動する(この場合、必要な装置のサイズを小さくできる)。しかし、これらの装置の性能に対して疑問が提起されており、これらの装置が全世界でどのような性能を発揮できるのかについては分析が行われていない。

今回、Jackson Lord、Philipp Schmaelzle、Ashley Thomasたちは、安全な飲料水を供給するための空気中水分収集装置の可能性を評価する地理空間ツールについて報告している。このツールには、湿度、気温、日射量の全球的パターンが組み込まれており、1~2平方メートルの太陽光収集面積を持つ仮説上の太陽電池式水分収集装置が用いられている。評価の結果、強い日光と30%超の湿度が実際に十分同時に存在し、日中の連続運転によって1日平均5リットルの水の生成が実現されることが明らかになった。この装置が広範に配備されれば、このような気候条件下で生活する約10億人に安全な飲料水を提供できる可能性がある。また、Lordたちは、これらの結果を既存のデバイスの可能性と比較し、最近登場した技術によってこれらの目標の達成が可能であることを示した。

今回の分析は、安全な飲料水に焦点を合わせており、灌漑、衛生設備、調理といった他の用途のための水を評価したものではない。Lordたちは、技術開発が続けば、自分たちの予測が達成され、世界的な影響を最大化する装置の将来設計に有益な情報を提供できる可能性があると考えている。

doi: 10.1038/s41586-021-03900-w

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