注目の論文

気候変動に応じて小さくなっている生物の体サイズ

Nature Climate Change

2011年10月17日

Shrinking in size

一次生産者から最上位捕食者までの生物すべてが、気候変動に応じて小型化していることを指摘するPerspective論文が、Nature Climate Change(電子版)に掲載される。

生物種の分布が温暖化に応答して高度と緯度の高い地域へ移動しており、一年のうちで渡りのような生活上の重要な出来事の起こる時期が早まっていることは、十分に確立されている。これに加えて、気温の上昇と降水量の変動に対する生態学的代謝的応答として、数多くの生物種が小型化しているのだが、こうしたことは、あまり知られていない。もしこの傾向が続けば、食料の安定供給の確保と生態系の安定性に多大な影響が及ぶ可能性がある。

このPerspective論文で、D BickfordとJ Sheridanは、化石記録からの証拠、実験的比較、地理的比較、そして、温血生物と冷血生物の小型化に現在の気候変動が関わっているとする最近の研究を検討した。そして、生物の体の大きさの変化の原因が気候変動と二酸化炭素濃度の上昇である可能性が非常に高いことを強調したうえで、観察された体サイズ小型化パターンの原因に関する理論を立て、この小型化傾向に注目すべき例外があることを論じている。

BickfordとSheridanは、この小型化傾向が、将来、かなり一般的に見られるようになり、ヒトの栄養にとって重要な作物とタンパク源に悪い影響が及ぶと主張している。そして、今後の研究では、これまでより広い観点から、この体サイズの傾向の定量化に取り組んで、小型化の駆動要因を明らかにしていくべきだと述べた。

doi: 10.1038/nclimate1259

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