ロンサム・ジョージの巨体と長寿はゲノムのたまもの
Nature Ecology & Evolution
2018年12月4日
Lonesome George’s genome granted gigantism and longevity
「ロンサム(孤独な)・ジョージ」を含む2頭のゾウガメのゲノムから、その体のサイズと長寿に関する洞察が得られたことを報告する論文が、今週掲載される。
ロンサム・ジョージは、すでに絶滅したガラパゴス諸島のピンタゾウガメ(Chelonoidis abingdonii)を象徴する最後の個体であった。
今回Carlos Lopez-Otin、Adalgisa Cacconeたちの研究グループは、ロンサム・ジョージおよびアルダブラゾウガメ(Aldabrachelys gigantea)1頭のゲノム塩基配列を解読した。アルダブラゾウガメは、インド洋に生息する唯一のゾウガメ種である。両者のゲノムを近縁種と比較した結果、代謝調節と免疫応答に関係する遺伝子ファミリーの正の選択、および増加を示す証拠が見いだされた。研究グループは、これらの遺伝子ファミリーがゾウガメの巨体と長寿に関係している可能性があることを示唆している。
寿命が長い生物は理論的にがんのリスクが高くなる。研究グループは、カメの腫瘍抑制遺伝子が他の脊椎動物よりも多くなっていることに加え、過剰発現ががんの一因となることが知られている2つの遺伝子のゾウガメ特異的な変化を明らかにした。こうした知見はゾウガメ特異的ながんの機序を示している可能性があるが、カメでは腫瘍が極めてまれであるため、このようなゲノムの特徴が腫瘍の発生と関係しているかを明らかにするには、さらに研究を進める必要がある。
著者たちは、今回のデータがゾウガメ生物学の理解を進展させる一助になるとともに、ガラパゴス諸島の他のゾウガメを保護する活動に役立つだろう、としている。
doi: 10.1038/s41559-018-0733-x
注目の論文
-
5月15日
惑星科学:月内部の非対称性を示す証拠Nature
-
5月15日
化石:最も古く知られている「爬虫類」の足跡Nature
-
5月14日
Nature Scientist at Work コンペティションの受賞者の発表Nature
-
5月8日
気候変動:若い世代は、より多くの気候の極端現象にさらされる可能性が高いNature
-
5月1日
ゲノミクス:古代 DNA がピクーリス・プエブロ族の人口史を補完するNature
-
5月1日
生態学:温暖化する北極圏における植物構成の変化Nature