注目の論文

クマは今でも狩猟に苦しめられている

Nature Ecology & Evolution

2017年12月12日

Hunting remains a burden to bear

スウェーデンでは、合法的な狩猟がヒグマの個体群に個体群統計学的な変化を生じ、生残仔数や平均余命などの個体群動態諸率が変化している。今週掲載されるその知見は、30年にわたるクマ個体追跡のデータの集大成である。

欧州の北部と中央部では、保護と持続可能な管理により、ヒグマの数が20世紀初頭の準絶滅状態から徐々に増加してきた。しかし今回、Richard Bischofたちは、狩猟が個体数だけでは測れない複雑な打撃を与えることを示唆している。

スウェーデン南部での1985年以降のクマのモニタリングにより、研究チームは、狩猟がクマの標準的な生活史の流れを変化させることを明らかにした。例えば、母親に付き従っている若いクマは保護されているが、3歳を超えると狩猟が最大の死因となり、幼体と比較して成体の斃死率が低いという自然なパターンはそれによって逆転する。1歳のクマの平均余命は、狩猟圧の低い年には8.8年であったが、狩猟圧が最高の時期にはわずか5.2年であったことが明らかにされた。また、高狩猟圧の時期には、雌のクマの繁殖価(将来的な雌の仔の数)が低下することも分かった。

研究チームは、狩猟規制をさらに長期的管理にかなったものとするためには、クマの狩猟への暴露状況を変化させる気候変動とともに、クマの個体群統計値のそうした変化を考慮しなければならない、と結論付けた。

doi: 10.1038/s41559-017-0400-7

「注目の論文」一覧へ戻る

プライバシーマーク制度