注目の論文

生態系の回復をコントロールする

Nature Plants

2016年7月12日

Calling the shots in ecosystem restoration

破壊された生態系は健全な土壌を移植することによって健全な状態を回復させることができると報告する論文が、今週掲載される。この研究は、異なる種類の土壌を移植することによってドナー系への回復が導かれること、すなわち集約農業に利用された土地を健全な草原やヒース地に変えることができることも明らかにしている。今回の知見は、数十年にわたる農耕で劣化した景観の復元に役立つ可能性がある。

かつて農耕が行われていた土地は、長年の集約的な生産が強い雑草を助長して土壌群集を破壊しているため、回復させることが困難である。これまでの研究は、かつての農地に健全な土壌を移植することが回復に役立つことを明らかにしている。しかし、Jasper Wubsたちは、健全な土壌生物相を少量投入することが土地の回復に役立つばかりか、投入する土壌の由来によってその回復が異なる種類の生態系へ導かれることを初めて明らかにした。

研究チームは、60年近くにわたって耕作されていた160 haの土地の一部から土壌の最表層を除去し、草原またはヒース地に由来する移植用土壌の薄層(1 cm未満)を別々の区画へ加えた。6年後、処置を行った区画は反応がそれぞれ異なり、土壌を移植した場所に草原またはヒース地と関係する植物が生えていることが観察された。さらに、その区画には、それぞれの生態系種別に特徴的な土壌無脊椎動物、微生物、および真菌類の定着が確認された。

doi: 10.1038/nplants.2016.107

「注目の論文」一覧へ戻る

プライバシーマーク制度