Research Highlights

変形性膝関節症における歩行障害、骨密度、軟骨下骨損失

Nature Reviews Rheumatology

2009年12月1日

Osteoarthritis Gait abnormalities, bone mineral density and subchondral bone loss in knee OA

変形性膝関節症における軟骨下骨摩耗(subchondral bone attrition:SBA)の存在と発生率は関節アライメント不良に関連するが、低骨密度(BMD)には関連しないことが、Annals of the Rheumatic Diseases に掲載された新たな研究により示された。

「OAには骨異常が存在することが知られているが、現在でもOA研究は概して、なぜ、そしていかにして軟骨異常が発生するのかを理解することに焦点が置かれている」と本論文の筆頭著者であるTuhina Neogiは説明する。著者らは本研究において、OAにおける骨の役割を解明するための第一歩として、骨質および異常な負荷がOAにみられる骨異常の一形態であるSBA(図1)に及ぼす影響を検討した。著者らがこれまでに示したとおり、「軟骨の損失はSBAが生じている膝小領域と同じ部位で発生する傾向にあり、この事実から、一方がもう一方に影響を及ぼしているか、または局所負荷などの共通の因子が両膝の同一部位での発生に影響を及ぼしている可能性が示唆される」とNeogiは述べる。

30ヵ月間にわたって実施された横断的観察研究は多施設観察研究(MOST:multicenter osteoarthritis)の一環であり、OAを発症しているかOA発現リスクが高い参加者の大規模コホートを組み入れている。ベースライン時に、検査した1,253膝のうち、550膝(44%)にX線学的OAが確認され、SBAが416膝(33%)に存在した。下肢全長の単純X線撮像により612肢(49%)に内反変形、249肢(20%)に外反変形が明らかにされたが、392足(31%)は正常なアラインメントであった。本解析は、年齢、性別、体格指数について補正され、骨代謝調節薬の使用も考慮に入れた。

研究結果から、脛骨大腿関節のアライメントはベースラインSRAと新規発生SRAの両方に関連し、局所負荷と膝OAの関係を示す他のエビデンスと一致した。ベースライン時に、外反変形は外側コンパートメントのSBAに関連し(オッズ比[OR]4.5、95%CI 2.8~7.1)、内反変形は内側コンパートメントのSBAに関連した(OR 2.9、95%CI 2.1~4.0)。研究期間中、外側および内側コンパートメントにおけるSBAの発生は、それぞれベースライン時の外反および内反変形に有意に相関した(OR 2.1、 95%CI 1.1~4.1とOR 1.9、95%CI 1.2~2.9)。

ベースライン時にX線撮像でOAが確認されなかった膝に限定してさらに解析した結果、各コンパートメントにおけるSBAの発生率に同様なアライメント不良の影響があることが明らかにされた。ただし、これらの関連は統計学的有意性には達しなかった。

SBA発生率が骨代謝回転に関連するかどうかを確定するために、二重エネルギーX線吸収法により測定する全身のBMDを骨質の大まかな評価値として用いた。著者らの予測に反して、低BMDはSBA発生率の上昇に関連しなかった。全身のBMDが最高三分位の患者では、ベースライン時(OR 1.5、95%CI 1.1~2.1)と30ヵ月間の研究期間中(OR 1.6、95%CI 1.1~2.3)のSBA発生率が最低三分位の患者より高かった。さらなる解析により、ベースライン時のアライメント不良がSBAの存在に及ぼす影響はBMDに左右されないことが明らかにされた。「この結果から、BMDは、生涯に膝全体が経験する全体的負荷を反映する可能性が示唆される。また、この結果は、高BMDと膝OAの関連に一致する」とNeogiは述べている。

したがって、著者らは、BMDは「異常な骨代謝回転や骨質のマーカーとして十分特異的ではない」と示唆している。Neogiは「骨質がSBAの素因となるかどうかという疑問に答えるためには、局所の骨質評価が必要になるだろう」と説明している。そのような調査では、マイクロCTや末梢骨用定量的CTなどのツールが有用である と考えられる。

米国ワシントン大学のLinda Sandell教授は、本研究の結果から、骨や軟骨にかかる負荷の増大と測定可能な転帰、すなわち画像による骨損失の検出に合理的な関連が示されることを示唆している。「本研究は、特定のアライメント不良と部位特異的な骨摩耗の発現に明確な関連があることを示しており、このため歩行障害と活発な細胞プロセスを示す画像所見とが結びつけられるようになった」。

著者らは、OAにおける骨の役割、骨異常と軟骨異常の相互関係、そのような異常の危険因子を理解するための研究を継続する予定である。「同様に、今後の試験では、OAで役割を果たす可能性のある生体力学的因子と全身的因子の相互作用に焦点を当てていくであろう」とNeogiは述べている。

doi: 10.1038/nrrheum.2009.206

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