Research Highlights

出て行け、JAK!

Nature Reviews Rheumatology

2009年9月1日

Rheumatoid arthritis Hit the road, JAKs!

関節リウマチ(RA)の病因におけるサイトカインの役割は十分確立されており、腫瘍壊死因子(TNF)阻害薬が有効であるRA患者が存在することから、明らかに示されている。過去20年間に実施された研究により、分子レベルでのサイトカインシグナル伝達経路が完全に理解されて、これにより、Janus inases(JAK)などの下流分子を直接標的とすることが可能になっている。JAKのうち、JAK1およびJAK3の2つは共通なg鎖含有サイトカイン受容体によるシグナル伝達に必須である。確立したRAにおいてJAKを「狙い打ちする」ことによりどのような効果が得られるのだろうか。

TNF阻害薬を含めそれまでの治療法に反応しなかった活動性RA患者を対象に、JAK阻害薬C-690,550を検討した二重盲検プラセボ対象比較第IIa相臨床試験が行われ、今回、その結果がArthritis & Rheumatism に発表された。本試験に登録した患者は、プラセボまたはCP-690,550 5mg、15mg、30mgを1日2回、6週間にわたり投与される群に無作為に割り付けられた。主要有効性エンドポイント(6週間後の米国リウマチ学会基準20%改善[ACR20]達成率)は、プラセボ群では29.2%であったのに対し、CP-690,550の5mg、15mg、30mg群ではそれぞれ、70.5%、81.2%、76.8%であった。また、治療開始後1週間で、CP-690,550投与の全群においてプラセボ群と比べて高い疾患活動性の改善(ACR20達成率)を認めた。治療開始後4週間までに、CP-690,550投与の全群においてプラセボ群と比べて高いACR50達成率およびACR70達成率を認めた。有効性 の点では、用量15mgに対して30mgにベネフィットは認められなかった。

治療開始後6週間に実施した安全性解析の結果、有害事象の発生率は、プラセボ群とCP-690,550 5mg投与群で同等であることが示された(有害事象を1件以上報告した患者が、それぞれ59%および58.5%)。しかし、高用量を投与された患者ほど、治療中に発生した有害事象の報告数が多かった(有害事象を1件以上報告した患者が、15mg群および30mg群でそれぞれ75.4%および76.8%)。報告された有害事象のうち最も頻度の高かったのは頭痛および悪心であった。貧血、白血球減少、好中球減少、リンパ球減少、血小板減少の発生率は、CP-690,550の30mg群がこれ以外の群に比べて高かったが、その重症度は全般に軽度から中等度であった。感染症の発生率は、15mg群および30mg群で同等 (30.4%)であった(プラセボ群:26.2%)。

本研究の著者の一人であるSamuel Zwillich(CP-690,550を開発した製薬会社Pfi zer社に在籍)に、本試験における安全性に関する指標について質問したところ、「ヘモグロビンと好中球についてはいずれも減少を認めたが、介入が必要になる場合はまれで、投与中断に即座に反応を示した。安全性について予期していなかった結果としては、P-690,550を投与した全群で、総コレステロール値、HDLおよびLDLコレステロール値が上昇したこと、血清クレアチニンの平均値が若干上昇したことが挙げられる。この結果を検討するために、追加試験を実施中である」。

CP-690,550を対象に、より期間の長い試験が実施中である。「この『proof-of-concept』試験に続いて、24週間の第IIb相用量設定試験を2件実施している。1件はメトトレキサートにより安定した活動性RA患者、もう1件は、全DMARDをウォッシュアウトした患者を対象としている」とZwillichは説明した。「われわれは、RA患者における第III相プログラムも開始しており、さらに、腎同種移植片の拒絶反応の予防や、乾癬、潰瘍性大腸炎、クローン病、ドライアイの治療用途にCP-690,550を積極的に検討している」。

米国国立衛生研究所(National Institute of Health:NIH)の関節炎・筋骨格系皮膚疾患研究所(National Institute of Arthritis and Musculoskeletal and Skin Disease)の科学部長であるJohn O’shea氏(1994年にJAK3をクローニングした。本経路を標的とした治療についてNIHと共同特許を有し、Pfi zer社との間に Cooperative Research and Development Agreementを締結している)は、RAの治療法にJAK阻害薬が加わる可能性があると考えている。「JAK阻害薬は、これ以外のDMARDに反応しなかった患者において明確な有効性を示し、有害事象の重症度もそれほど高くないようであるため、これらの結果は興味深い」とO’sheaは言う。

O’sheaが興味を抱いているのは、JAK阻害薬がどのように作用し、どの細胞やサイトカインが阻害されているのかということである。しかしO’sheaが言うとおり、「JAK阻害薬の活性の基礎にある機序を知ることは興味深いが、それが分からなくてもJAK阻害薬は機能する。メトトレキサートのことを考えてみればわかる。現在でも、メトトレキサートの作用機序は本当には明らかになっておらず、さらにこの薬剤には毒性がある。それでもわれわれは、長い時間をかけて、安全で有効な用量を明らかにしてきた」。

O’sheaが結論するように、「基礎研究がわれわれをここまで導いた。10年前、興味の対象はJAKシグナル経路の解明であった。今では、その経路を標的とする薬剤を手に入れている。この真に有効な薬剤が診療現場で利用できるときが来たのだ。まもなく、JAKを標的とすることの臨床的意義が明らかになるだろう」。

doi: 10.1038/nrrheum.2009.151

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