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変形性関節症:症候性股関節OAにヒアルロン酸は有効ではない

Nature Reviews Rheumatology

2009年7月1日

Osteoarthritis Hyaluronic acid is not effective in symptomatic hip OA

変形性膝関節症の試験によるエビデンスと一致して、ある無作為化対照試験の結果により、症候性変形性股関節症に対して、ヒアルロン酸の単回関節内注射は、疼痛緩和効果がプラセボと同程度でしかないことが明らかにされている。

ヒアルロン酸ナトリウムまたはその誘導体を含有する溶液を患者の関節内に注射する関節内補充療法は、天然または内因性のヒアルロン酸(HA)を補充することによって、滑液の粘弾性を回復させるといわれている。最近まで、股関節の変形性関節症(OA)に対するHAの有効性を評価する対照試験は不足していた。しかし、先ごろの発表2,3を受けて現在では、有効性を示唆する非対照試験のエビデンスにもかかわらず、HAは症候性股関節OAに有効ではないという一層の確信が得られている。

Richetteら2は、「Arthritis & Rheumatism」の2009年3月号において、HAの単回関節内注射は、股関節OAの症状の治療において、プラセボと同程度の効果しかないことを報告した。こわばり、機能障害、鎮痛薬とNSAIDsの使用などのその他の転帰も、実薬群とプラセボ群で同様であった。

この多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験では、股関節OA患者42例がHA 2.5mLを単回関節内注射する群に、43例がプラセボを注射する群に、無作為に割り付けられ、3ヵ月にわたり追跡調査された。ビジュアルアナログスケールで評価した3ヵ月後の疼痛は、両群で同程度に緩和されていた。各群の患者の約3分の1が、Osteoarthritis Research Society Internationalの基準に従って有効例に分類された。

筆者の意見としては、注射手技の技術的困難と、有害作用の可能性が、得られる可能性のあるすべてのプラセボ効果を上回るといえる。プラセボ群の2例と実薬群の5例の計7例に、治療と関連の可能性がある、または可能性が高いと判定された有害事象が発現した。その内訳は、注射中の疼痛、股関節痛の悪化、掻痒、疼痛再燃(3例)、注射部位の血腫であった。

この研究にはいくつかの限界があって、そのために結論の強さがやや損なわれている。この試験では、登録された患者数が、計算により事前に定められた122例という標本サイズに到達しなかった。とは言っても、有効であるという傾向は示唆されず、何らかの臨床的有意性を示すものは1つもなかった。鎮痛薬またはNSAIDs使用日数の割合は2群間で差がなかったが、用量評価の一部は、参考になる可能性がある。先行研究によって、種々のHA製剤はそれぞれに有効性が異なること、また、2回以上の注射が有効となり得ることが示唆されている。効果がないかもしれない理由としてさらに挙げられているのは、炎症または滲出液の有無に従って反応が異なる可能性があるという点である。しかし、先行する研究では、滲出液の存在によって股関節OAにおけるHAの有効性の欠如が説明される可能性は低いことが示唆されている。

これらの限界を別にすれば、この試験の結果は基本的に妥当であり、観察された有効性の欠如は、膝関節OAに対しHAを検討した試験のエビデンスと一致している。報告された有効性には一貫性がないが、膝関節OAに対する滑液補充療法は、せいぜい、臨床的に重要でないわずかな効果をもたらすのみとされている。

股関節OAの有病率は、65歳を超える人で約8%であり、高齢化や肥満有病率の上昇とともに上昇すると予測される。さらに、股関節OAは障害の主な原因であり、米国で1年間に施行される人工股関節置換術約200,000件の主な理由でもある8。Richetteら2の研究の結果を手にして、多くの臨床医は尋ねるであろう。症候性股関節OAというこのよくみられる問題をどうすれば治療できるのであろうかと。医師から提示される保存的治療の選択肢が少ないために、ますます多くの患者が、有効性を裏づける実質的なエビデンスがほとんどない、未検証の民間療法や積極的に売り込まれる栄養補助食品に頼るようになっている。必然的に、関心をもった臨床医は、外科的介入を虚無的に待つ以外に、はるかに 多くのことを行うことができる。この広がりつつある疾患に対しより有効な長期治療をさらに促進するために、臨床医には、患者に積極的に関わり、自己管理法を教え込むことを勧めたい。現在の管理パラダイムでは、非薬物治療(教育、運動、減量、理学療法など)と薬物治療の両方の使用が推奨されている。注射が、臨床医の進みたい道であるならば、股関節OAに関連した持続痛がある患者においては、ステロイドの関節内注射によって、少なくとも3ヵ月間疼痛を著しく軽減することが可能である。これらの選択肢が有効でなくなったときには、人工関節全置換術が有効な治療的介入となる。患者の不利益になるのは、第1段階(非薬物治療の選択肢)があまりにも頻繁に忘れられること、あるいは十分に重視されないことである。高齢者におけるOAの負担増大を軽減するためには、OA患者のこの管理法に注意を向けることがきわめて重要である。

doi: 10.1038/nrrheum.2009.119

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