注目の論文

【食事】コレステロールが腸の炎症を引き起こす

Nature Communications

2014年12月24日

Diet: Cholesterol is an inflammatory issue

コレステロールを多く含む「欧米スタイル」の食事が炎症性腸疾患を引き起こす機構とされるものを示した論文が、今週掲載される。この論文には、こうした炎症がゼブラフィッシュで起こる機構について記述されているが、これによって食事がヒトの健康にどのように影響するのかという論点についての理解が進むかもしれない。

欧米スタイルの食事は、ますます普及しているが、潰瘍性大腸炎、クローン病などの慢性炎症性腸疾患に関連すると考えられている。しかし、欧米式の食事がこうした疾患と結び付く機構については明確になっていない。今回、Margaret Dallmanたちは、クロテッドクリーム(乳脂肪分の高い濃厚なクリーム)を水槽の水で薄めて、コレステロールが多く含まれる状態を作り出し、そこで飼育されたゼブラフィッシュの腸内で、クリーム摂取から数時間以内に炎症応答が起こったことを明らかにした。Dallmanたちは、こうした応答の直接の原因が、腸の内壁を覆う上皮細胞上のタンパク質とコレステロールとの結合であり、間接的な原因としては、腸内細菌からのシグナル伝達であることを明らかにした。こうした原因が組み合わさって、腸上皮細胞でインフラマソーム(炎症を引き起こす多タンパク複合体)の活性化が起こった。

また、コレステロールを多く含む食餌を10日間続けたゼブラフィッシュは正常な蠕動ができなくなった。これは、過敏性腸症候群などの胃腸疾患の顕著な特徴だ。蠕動とは、消化管の筋肉による収縮と弛緩の波のことで、これによって食物が消化管を移動する。以上の結果を総合すると、腸内での急性炎症反応が長期的な健康問題の一因となっている可能性が示唆される。ただし、今回の研究結果がヒトにとって意味のあるものなのかどうかを判断するには、さらなる研究が必要だ。

doi: 10.1038/ncomms6864

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