注目の論文

エボラ:非ヒト霊長類で長期間続く免疫を生じさせるエボラ出血熱ワクチン

Nature Medicine

2014年9月8日

Ebola: Durable immunity generated in non-human primates

現在西アフリカでは、致死率の非常に高いザイール型エボラウイルス(EBOV)感染が広がっている。今回、チンパンジーアデノウイルスベクターChAd3を使ったワクチンによって、このウイルスに対する長期間持続する免疫がマカクザルで生じたことが報告され、このワクチンについてヒトでの第I相臨床試験が行われることになった。ChAd3ワクチンは単回接種でも短期的には完全な予防効果があり、長期的効果もある程度は認められたが、まずエボラウイルスの糖タンパク質をコードするChAd3を接種し、次いで8週間後に同じ遺伝子を持つ別のベクターMVA(改変ワクシニアウイルスアンカラ)を接種するプライム・ブースト法が最も効果的であることが明らかになった。これは、エボラウイルスに対して接種後10か月間にわたって防御効果を示すことが分かった初めてのワクチン接種方法である。

N Sullivanたちが、エボラウイルスワクチンを開発するこれまでの試みで数回使われてきたヒトアデノウイルスではなく、チンパンジーアデノウイルスを選んだのは、多くの人がヒトアデノウイルスにすでに曝露されており、そのために免疫系がプライミングされていてウイルスが中和される可能性があるからである。今回のワクチンの前臨床試験は少数のマカクザルを使って行われた。長期的な防御効果は、宿主防御に関係するエフェクターT細胞および記憶T細胞の存在数と相関していた。

マカクザルが曝露されたのはEBOVだけだが、このワクチンにはEBOVの糖タンパク質だけでなく、広く見られるスーダン型エボラウイルス(SUDV)の糖タンパク質の遺伝子も含まれており、両方の型のウイルスに対して防御効果を示す可能性がある。速やかに効果が現れ、しかも免疫が持続するワクチンは、新たに出現するエボラウイルスの拡大を封じ込めるのに役立つだろうと著者たちは考えている。

doi: 10.1038/nm.3702

「注目の論文」一覧へ戻る

プライバシーマーク制度