免疫学:女性から男性への性別適合ホルモン治療における免疫適応
Nature
2024年9月5日
Immunology: Immune adaptations in female-to-male gender-affirming hormone treatment
性別適合ホルモン(gender-affirming hormone)療法を受けているトランスジェンダーの男性(出生時に女性として登録された)の免疫反応は、シスジェンダーの男性の免疫反応に近づくことを報告する論文が、今週発行のNatureに掲載される。23人のトランスジェンダー男性を対象としたこの分析では、免疫の調整における性ホルモンの役割を取り上げている。この発見は、性別適合ホルモン療法を受けている個人の健康だけでなく、シスジェンダー個人間の免疫反応の違いを理解する上でも重要な意味を持つ。
免疫反応は、遺伝、ホルモン、および行動の要因により、男性と女性で異なるものの、これらの要因の相対的な重要性についてはまだ解明されていない。女性から男性への性別適合を目的としたテストステロン療法中に経験するホルモン値の著しい変化が免疫に及ぼす影響についても、まだ充分に理解されていない。性別適合を目的としたホルモン療法が免疫反応に及ぼす影響を研究することは、性ホルモンが免疫に果たす役割を解明し、従来から対象外とされ、充分なサポートを受けてこなかった患者層のケアを改善する機会となる。
出生時に女性と割り当てられたトランスジェンダーの男性23人の免疫システムを、性別適合テストステロン治療の前後でプロファイリングしたところ、Petter Brodinらの研究チームは、性ホルモンが免疫反応に与える影響についての洞察を得た。被験者は治療開始直前にモニタリングされ、その後、12週間ごとにテストステロン注射を1回ずつ投与し、3か月後と12か月後に再度モニタリングされた。著者らは、治療開始から3か月以内に、免疫反応がシスジェンダーの男性の反応により近づく変化が観察されたと報告している。
著者らは、この研究はサンプルサイズが限られていると指摘している。しかし、この発見はトランスジェンダーの男性の健康と幸福を向上させ、出生時に男性と割り当てられた人や臨床的理由でテストステロン療法を受けている人々に典型的に見られる、重度の感染症や炎症性疾患などの長期的な悪影響を回避できる可能性があると提案している。さらに、この発見は、シスジェンダーの男性と女性における免疫反応の違いを説明することにも役立つかもしれない。また、更年期など、人間の加齢に伴う性ホルモンの変化によって引き起こされる免疫反応の変化についても説明できる可能性がある。
Lakshmikanth, T., Consiglio, C., Sardh, F. et al. Immune system adaptation during gender-affirming testosterone treatment. Nature 633, 155–164 (2024). https://doi.org/10.1038/s41586-024-07789-z
doi: 10.1038/s41586-024-07789-z
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