がん:複数のがん種の診断ツール
Nature Sustainability
2024年4月23日
Cancer: A sustainable diagnosis tool for multiple cancers
すい臓がん、胃がん、大腸がんなどの複数のがん種の、正確かつ手頃で、環境にやさしく使いやすい診断ツールについて報告する論文が、Nature Sustainabilityに掲載される。このツールは、数分以内にがんを診断でき、特に遠隔地において、利用しやすい診断ツールの必要性への取り組みに役立つ可能性がある。
世界中の10億人を超える人々が、病気の見逃しを経験しており、世界保健機関(WHO)は、広く利用できる診断施設を持つ低所得国は30%未満であると見積もっている。また、全世界のがん関連死の70%が、低所得国と中所得国で発生していると見積もられ、正確で手頃な検査の必要性が示されている。さらに、生態学的に敏感な地域やエネルギーの乏しい地域で検査が行われる可能性があり、持続可能なオプションを確実に利用できるようにする解決策が必要である。
今回Kun Qianらは、代謝産物の検出に基づくがん診断法を開発した。このツールは、従来の液状の血液検体ではなく乾燥血清スポットを用いるため、生体試料を集めて保存するための環境にやさしく代謝産物が安定した解決策をもたらす。Qianらは、この乾燥血清スポットを、検出感度と検出速度を高めたナノ粒子増強質量分析法と組み合わせた。Qianらは、この方法によって、すい臓がん、胃がん、大腸がんの診断が数分以内に可能になり、手頃な検査費用、環境適合性、血清と同等の精度、利用しやすいプロトコルが得られることを示している。また、集団がん検診プログラムとの協働によって、低開発地域にこのツールを導入すれば、大腸がん、胃がん、すい臓がんの見逃しを20.35~55.10%削減できる可能性があると示唆している。
Qianらは、この技術によって、利用のしやすさと正確さが増し、利用可能なリソースの範囲内で健康状態を最大限に改善できる可能性があると結論付けている。
doi: 10.1038/s41893-024-01323-9
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