生理学:マウスのカロリー制限の有益な効果には絶食が関係しているかもしれない
Nature Metabolism
2021年10月19日
Physiology: Fasting may mediate the beneficial effects of calorie restriction in mice
マウスのカロリー制限食がもたらす寿命の延長や代謝面の有益効果は、単に摂取カロリーが減少することだけでなく、1日の絶食時間が長くなることが原因である可能性がある。このことを報告する論文が、Nature Metabolism に掲載される。ただし、この知見を、例えば別の系統のマウスや性別の異なるマウスにも一般化できるかを明らかにするには、さらに研究が必要だろう。
カロリー制限が健康的な加齢につながることは、多くの生物種で知られている。最近、マウスで絶食が寿命を延長し、代謝に有益な効果を及ぼす証拠が見つかった。しかし、食餌をいつ食べるかの制御がもたらすこれらの効果の基盤となる生理学的機序と分子機序は、これまでのところ詳しくは解明されていない。
今回、Dudley Lamming、Heidi Pakたちは、雄マウスを3つのグループに分け、いずれにも、1日の摂取カロリーを30%減らした食餌を、異なったやり方で16週にわたって与えた。1つ目のグループは食餌を制約なしに摂取できるようにし、2つ目のグループは、同じ量の食餌を12時間のうちに3回摂取した。3つ目のグループは、食餌を大急ぎで食べるよう訓練したため、1日の残りの時間は「絶食」することになった。さらに、げっ歯類の通常の食餌をカロリー制限せずに与えたマウスを対照群とした。実験の結果、インスリン感受性や栄養素の代謝の変化をもたらすには、絶食が重要であることが分かった。実際、絶食だけで(カロリー制限をしないでも)、カロリー制限に関係する代謝や転写へのある種の効果を再現できた。ある特定の系統の雄マウスで、カロリー制限によってグルコース代謝やフレイルの改善、寿命の延長を引き起こすためには、絶食が必要であった。
著者たちは、これらの結果によって、代謝の健康と寿命の調節にはどれだけ食べるかだけでなく、いつ食べるかも関係しているという予備的洞察が得られたと述べている。著者たちはまた、これらの結果を今後の研究の重要な対象となるであろうヒトに当てはめるには注意が必要だとも述べている。
doi: 10.1038/s42255-021-00466-9
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