注目の論文

ウイルス学:ハンセン病治療薬によるSARS-CoV-2感染ハムスターモデルの治療

Nature

2021年3月16日

Virology: Leprosy drug treats SARS-CoV-2 in a hamster model

現在はハンセン病の治療に用いられているクロファミジンが、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に感染したヒト細胞とハムスターモデルに対して有効なことを報告する論文が、Nature に掲載される。クロファミジンは経口投与が可能で、他の薬剤と比べて製造コストが低いことから、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の治療薬候補として注目を集める可能性がある。

今回、Sumit Chandaたちは、米国食品医薬品局(FDA)により承認されているクロファミジンのコロナウイルスに対する有効性を検討した。その結果、クロファミジンが、ヒトとサルの細胞株とヒト肺組織における2種類のコロナウイルス(SARS-CoV-2とMERS-CoV)の複製を抑えることが明らかになった。また、クロファミジンの抗ウイルス作用の分析では、クロファミジンが、SARS-CoV-2複製の複数の段階を標的としており、細胞融合過程を阻害したり、SARS-CoV-2のヘリカーゼ酵素の活性を阻害したりすることが観察された。

SARS-CoV-2感染のハムスターモデルを使って、ウイルスへの曝露の前か後にクロファミジンを投与したところ、肺から検出されるウイルス粒子の数が有意に減少した。クロファミジンとレムデシビルと共投与した場合には、相乗的に作用して、SARS-CoV-2の複製が抑制された。ハムスターモデルにクロファミジンと低用量のレムデシビルを併用した場合には、ウイルス制御が有意に改善された。

Chandaたちは、クロファミジンがSARS-CoV-2に感染した外来患者に対する魅力的な治療薬候補になり得ると示唆している。治療選択肢としてのクロファミジンの可能性を確立するためには、臨床評価が必要である。

doi: 10.1038/s41586-021-03431-4

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