注目の論文

疫学:COVID-19患者の年齢別死亡率に見られるばらつきを解明する

Nature

2020年11月2日

Epidemiology: Identifying variations in age-specific COVID-19 death rates

このほど実施されたモデル研究で、SARS-CoV-2感染による死亡リスクの年齢依存性は、65歳未満の場合には国を問わず一貫しているが、それよりも高齢の人々における死亡の相対リスクについては、国によって相当なばらつきがあることが明らかになった。例えば、ヨーロッパ諸国の65歳以上(COVID-19関連死のリスク因子の1つとして確立されている)の死亡数は、期待死亡数を大幅に上回っている。今回の研究では45か国のデータが使用され、各国の感染レベルと対策の有効性を評価するために使用できる情報がもたらされた。この研究結果について報告する論文が、Nature に掲載される。

SARS-CoV-2の伝播レベルと感染の重症度のモニタリングは、このウイルスのパンデミック(世界的大流行)への対策の指針を決める上で重要なツールだが、入手可能なデータに一貫性がないために困難に陥る場合がある。血清学的調査は、対象集団においてSARS-CoV-2に対する抗体を有する人の占める割合を推定するために実施されるが、検査能力によって得られるデータにばらつきが生じる可能性がある。死亡に関するデータは、SARS-CoV-2の伝播速度と感染の重症度を示す信頼できる指標と考えられるが、このデータは、ウイルスが集団発生した場所によって一貫性がない場合もある。例えば、介護施設では、一般集団と比較して、伝播速度と死亡率が異常に高い。

今回、Megan O’Driscollらの研究チームは、感染と死亡のパターンを調べるため、45か国におけるCOVID-19の死亡データと22件の全国レベルの血清学的調査の結果を用いて、モデルを作成した。そして、O’Driscollたちは、感染時致命割合(SARS-CoV-2感染者において死者の占める割合)の推定値を算出した。この数値を使うことで、報告死亡数と期待死亡数を比較できる。年齢別の死亡の相対リスクは、65歳未満の場合に各国間で一貫しており、感染関連の死亡リスクが最も低いのは5~9歳の小児であり、感染時致命割合は、年齢が5歳上昇するごとに0.59%増加した。

O’Driscollたちは、65歳以上の対象者について、老人ホームでの感染を除外して、期待死亡数を算出し、この期待死亡数とこの年齢層の報告死亡数を比較し、国によって、その差にばらつきがあることを明らかにした。例えば、南米では65歳以上の報告死亡数が期待死亡数を下回っており、これは、高齢者におけるCOVID-19死の過小報告のためである可能性が非常に高い。一方、ヨーロッパの大部分の国々では、介護施設での集団発生が多かったため、65歳以上の報告死亡数が期待死亡数を上回っていた。

以上の知見は、血清学的調査結果と死亡データを組み合わせる用いることで、SARS-CoV-2感染の伝播速度と死亡率の傾向を評価できることを示している。O’Driscollたちは、モデルに基づいた感染率の推定値は、脆弱な集団における過剰死亡が起こった可能性のある国を特定する上で役立つと結論付けている。

doi: 10.1038/s41586-020-2918-0

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