微生物学:母乳育児は、乳児の腸へのウイルス定着に影響を及ぼす
Nature
2020年4月16日
Microbiology: Breastfeeding affects viral colonization of the infant gut
出生直後の乳児の腸内におけるウイルスの定着は、乳児が母乳で育てられたかどうかによって多くなったり、少なくなったりすると考えられるという結論を示した論文が、今週Nature に掲載される。今回の研究の結果は、ウイルスの定着が段階的に起こり、母乳だけで育てられた乳児や母乳を併用して育てられた乳児は一部のヒトウイルスから保護される可能性があることを示唆している。
生まれたばかりの新生児の腸内にウイルスは存在しないが、その後間もなく腸内にウイルスなどの微生物が定着する。しかし、ウイルス集団の集合過程についての解明は進んでいない。
今回、Frederic Bushmanたちの研究チームは、生後早期に起こるウイルスの定着を調べるため、生後0~4日に健康な乳児20人から採取した糞便検体を分析し、生後1か月と4か月にも再度分析した。生後4日間に採取された検体からウイルス様粒子は検出されなかったが、生後1か月で採取された検体の大部分でウイルス様粒子が検出された。Bushmanたちは、ウイルス集団の起源を明らかにするためにゲノム塩基配列解読を行い、出生直後の乳児の腸内に先行菌が定着し、生後1か月までにバクテリオファージ(細菌感染性ウイルス)がウイローム(ウイルス群集)の主たる産生源となり、生後4か月までにはヒト細胞内で複製するウイルスの中で特定可能なアデノウイルス、ピコルナウイルスなどのウイルスが顕著になったことを明らかにした。
次に、Bushmanたちは、今回の研究で得たウイルスのデータをさまざまな変数(摂食歴、分娩様式、性別など)と比較した。その結果、ヒト細胞内で複製するウイルスの蓄積が少ない乳児と母乳で育てられたことが関連していることが分かった。この知見を検証するため、Bushmanたちは、別のコホート(乳児125人)において生後3~4か月の時点で糞便検体を採取した。このコホートでは、調合乳で育てられた乳児の30%の糞便検体からヒトウイルスが見つかった。これに対して、母乳のみで育てられた乳児または母乳と調合乳を併用して育てられた乳児の9%の糞便試料からヒトウイルスが見つかった。
doi: 10.1038/s41586-020-2192-1
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