注目の論文
【神経科学】ヒトの脳オルガノイドの適性を調べる
Nature
2020年1月30日
Neuroscience: The suitability of human brain organoids questioned
オルガノイドを用いたヒトの脳の発生モデルは、生命の初期段階を忠実にモデル化するという点で十分とは言えず、さらなる改善が必要だという考えを示す論文が掲載される。
皮質オルガノイドは、実験室で培養され、3次元構造へ自己組織化する細胞塊のことで、発生段階のヒト大脳皮質の特徴をモデル化したものだ。このようなオルガノイドモデルは、脳発生の研究で利用されることが多くなってきているが、発生段階の脳とオルガノイドモデルに存在する細胞や分子のカタログの比較がほとんど行われていないため、オルガノイドモデルがどの程度正確なのかが明らかでない。今回、Arnold Kriegsteinたちの研究チームは、この論点に取り組むために、発生段階のヒト皮質から採取した約20万個の個別細胞の遺伝子発現プロファイルを記録し、それを参照リストとして用いて、オルガノイド培養物の正確性を測定した。
ヒトの脳内細胞とオルガノイド培養物には、いくつかの重要な違いがあった。ヒトの脳内細胞は、発生の過程でそれぞれ異なる軌跡をたどって、広範で多様な細胞サブタイプの集団を形成するが、オルガノイド培養物からは、成熟度の低い細胞種が生じる傾向が見られた。ヒトの脳細胞には領域特異的な特徴があり、皮質内の位置に依存しているが、こうした空間的構成がオルガノイドにはなかった。数多くの種類のオルガノイドを培養できるようになっているため、Kriegsteinたちは、今回の研究とそれによって得られるカタログが、他の研究者がそれぞれの組織培養系の適性を評価する上で役立つことを期待している。
doi: 10.1038/s41586-020-1962-0
注目の論文
-
12月13日
Nature Medicine:2025年の医療に影響を与える11の臨床試験Nature Medicine
-
12月12日
天文学:Firefly Sparkleが初期の銀河形成に光を当てるNature
-
12月12日
医学:マウスの子癇前症に対するmRNA療法の提供Nature
-
12月10日
Nature's 10:2024年の科学に影響を与えた10人Nature
-
12月10日
加齢:脳の老化に関連する重要なタンパク質の発見Nature Aging
-
12月3日
神経科学:標的を絞った脳深部刺激が脊髄損傷後の歩行を改善するNature Medicine