統合失調症のハイリスクと健常者の就学期間の短縮に関連する、まれな機能障害性変異
Nature Neuroscience
2016年10月4日
Rare damaging mutations increase risk for schizophrenia and decrease educational attainment in healthy individuals
遺伝子機能を破壊する複数の非常にまれな遺伝的変異が統合失調症患者に一般的に見られ、健常者の正規教育の就学期間が短くなることとも関連していることが2つの独立した研究で明らかになった。この研究結果を報告する2編の研究論文が、今週のオンライン版に掲載される。ただし、就学期間の長さは、数多くの認知的、性格的、心理的要因にも影響されるため、どの要因がこれらの遺伝的変異の影響を受けるのかは分かっていない。
1つの集団で一般的に見られる遺伝的変異は、認知機能のような形質の多様性の一因であり、統合失調症のような精神疾患のリスクの一因でもある。機能障害性遺伝的変異は、自然選択によって出現頻度が非常に低くなっているため、疾患に対する寄与を評価することが相対的に難しい。
今回、Steven McCarroll, Giulio Genoveseたちの研究チームとAndrea Gannaたちの研究チームは、血縁関係のない数千人の被験者(統合失調症と診断された者も含まれている)のエキソーム(タンパク質をコードするDNA塩基配列)を調べた。McCarrollとGenoveseの研究チームは、スウェーデン人12,332人のサンプルでわずか一度しか観察されておらず、精神疾患にかかっていない者の45,000点以上のエキソームからは検出されたことがない遺伝的変異に着目した。その結果、まれな機能障害性遺伝的変異が、統合失調症の患者全体での出現頻度が相対的に高く、変異したタンパク質が脳細胞のシナプスで特異的に発現し、他の種類の細胞や器官では発現しなかったことが明らかになった。
一方、Gannaの研究チームは、スウェーデン、エストニア、フィンランドの14,133人を対象として、まれな機能障害性変異と就学年数の関係を評価した。この研究チームが着目したのは、DNAの変異に対する感受性が非常に高く、一般集団における変異の少ない遺伝子の一群だった。これらの遺伝子のいずれかにおける機能障害性変異は、それぞれ就学月数が3か月短いことと関連していた。また、脳内で発現するこれらの遺伝子を調べたところ、これらの遺伝的変異のうちの1つの影響がもっと大きく、就学月数が6か月短くなった。
2つの研究チームは、何千人もの被験者を調べたが、それでもサンプルサイズが小さすぎて、統合失調症や就学月数の短縮の一因となるまれな変異のある遺伝子を同定することはできない。特定の遺伝子や脳内過程を正確に示し、精神疾患のまれな遺伝的リスクと認知機能の典型的な多様性の重なり合いを評価するためには、今回よりも大型の研究を行う必要がある。
doi: 10.1038/nn.4402
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