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高処理能スクリーニングがうまくいく理由

Nature Chemical Biology

2009年6月1日

Why does high-throughput screening work?

薬物スクリーニングのライブラリーは、生物的な標的に認識される可能性の高い物質に偏っていることが、新たな分析によって明らかにされた。Nature Chemical Biology(電子版)に発表されるその研究は、そうしたスクリーニング法がなぜこれまでうまくいっていたのか、なぜ今後の薬物探索の成功率を上げる方法に関して重要な意味をもつと考えられるのか、という問いに一定の説明を与えている。

新薬の発見で主流となっている高処理能(ハイスループット)スクリーニング(HTS)では、何百万個もの候補物質を対象とする生化学的な試験を短時間で行うことができる。1回のスクリーニングに用いることが考えられる物質の総数は、少なくとも1060個に上る。それに対し、製薬企業が利用する大規模なHTSライブラリーに含まれる物質は、その10億分の1にも達しないと考えられる。「物質の宇宙」の全体からそのようにわずかしかサンプリングされていないことからは、HTSがうまくいくとは考えにくい。しかし、うまくいくのである。B Shoichetたちは、スクリーニングライブラリーに含まれる物質がどの程度自然界の物質とみられるのかを定量する方法を開発し、スクリーニングライブラリーがこうした「生体系」の物質にかなり偏っていること示す証拠を発見した。

この結果は、現在の高処理能スクリーニングの成功率に対する有力な解釈を提示するとともに、一部の標的でそれがうまくいかない理由についての手かがりも示している。そのような失敗事例に関して今回の研究成果は、現在のスクリーニングライブラリーに欠けている物質を新たに加えれば、リード化合物が発見される確率が高まる可能性があることを示唆している。

doi: 10.1038/nchembio.180

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