注目の論文
高強度の人工スパイダーシルクを作る
Nature Chemical Biology
2017年1月10日
Spinning stronger synthetic spider silk
強度の高い人工的なクモの糸(スパイダーシルク)を製造する新しい方法が、今週掲載される。スパイダーシルクは用途が多彩な生分解性材料として有望であるが、これまで天然のものと同じ特性を持つ人工品を製造することは難しかった。
スパイダーシルクは、タンパク質分子が長くつながった鎖によって作られている。シルクの生成に用いられるタンパク質は、絹糸腺内で極めて高濃度の溶液の形で貯留されている。クモは、糸を出すとき、細い管からそのタンパク質溶液を分泌する。この管沿いに酸性度が変化して圧力が上昇することにより、タンパク質分子は連結され、シルク繊維を形成する鎖になる。
クモが糸を作る方法にヒントを得たJan Johansson、Anna Risingたちは、クモの絹糸腺内でシルクのタンパク質(シルクプロテイン)が遭遇する細い管および酸性度変化を模倣した製糸装置を考案した。特殊なタンパク質(2種類の天然シルクプロテインのハイブリッドであり、高度に濃縮された形で製造することができる)にこの装置を用いると、強度および弾性が他の人工シルクを上回る人工スパイダーシルクが得られた。その強度は天然のスパイダーシルクとほぼ同等であった。
研究チームによれば、この方法で製造される生分解性シルクは、天然のスパイダーシルクと比較して安価で入手しやすく、高性能の繊維素材や高度な医療装置などに応用されるシルクの大量生産が見込まれるという。
doi: 10.1038/nchembio.2269
注目の論文
-
4月18日
生物学:闘争・逃走系の起源Nature
-
4月4日
化学:生命の化学的起源がどのように形成されたかという謎の解明に向けた熱い流れNature
-
3月27日
機械学習:ベルギービールの風味を高めるNature Communications
-
3月22日
化学:ちょっと立ち止まって体臭の化学組成の違いを調べてみたCommunications Chemistry
-
2月28日
持続可能性:もっと環境に優しい方法でデニムを青く染めるNature Communications
-
1月24日
化学:複数の自律型実験室をつないで国際的な共同研究を進めるNature Communications