Primer

機能性ディスペプシア

Nature Reviews Disease Primers

2017年11月3日

Functional dyspepsia

機能性ディスペプシア
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機能性ディスペプシアは罹患率が最も高い機能性消化管疾患の1つである。機能性ディスペプシアの病型は、病態生理と病因の違いによって、食後愁訴症候群(PDS)と心窩部痛症候群(EPS)に分けられるが、両方が重複する病型もある。機能性ディスペプシア症状は、消化管運動機能障害(胃底部弛緩不全、胃排出遅延など)、消化管知覚過敏(ガスや膨満に対する過敏症を伴う知覚過敏など)、および胃・十二指腸の炎症によって起こると考えられている。機能性ディスペプシアには遺伝的素因があるとみられているが、過敏性腸症候群(IBS)などの他の機能性消化管疾患と比べて詳細は分かっていない。精神疾患の共存をはじめ、精神病理学的な状態と性質も影響し得るが、いずれも機能性ディスペプシアに特異的なものではなく、IBSほどは明らかになっていない。ヘリコバクター・ピロリ菌感染および消化性潰瘍などとの鑑別診断が行われることがある。機能性ディスペプシアの薬物治療は病型に基づいて行われ、通常、PDSには消化管運動機能改善薬や胃底部弛緩薬が使用され、EPSには制酸薬が用いられるが、中枢性神経修飾物質や漢方薬も一部で有効である。ほぼすべての患者のQOLは深刻な影響を受けるが、ごく一部の症例で心理療法が有効な場合がある。今後、胃・十二指腸の炎症に有効な新たな治療薬などの開発が試みられるだろう。

PrimeView
機能性ディスペプシアはよく見られる機能性消化管疾患の1つで、器質的疾患を伴わない胃の不快感や痛みを特徴とする。このPrimeViewでは、多因子による機能性ディスペプシアの発症要因について取りまとめる。
本Primerの図解サマリー

doi:10.1038/nrdp.2017.81

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