Primer

腫瘍性骨軟化症

Nature Reviews Disease Primers

2017年7月13日

Tumour-induced osteomalacia

腫瘍性骨軟化症
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腫瘍性骨軟化症(TIO)は、腫瘍原性骨軟化症としても知られる、まれな腫瘍随伴性障害で、腫瘍組織から分泌される線維芽細胞増殖因子23(FGF23)が原因で発症すると考えられている。FGF23はリン排泄とビタミンD合成に役割を担うため、TIOでは、リンの腎尿細管再吸収の低下、低リン血症、活性型ビタミンD濃度の低下などの特徴が認められる。慢性低リン血症は、最終的に骨軟化症(不十分な骨石灰化)につながる。通常、TIOの診断は、骨の痛み、脆弱性骨折および筋力低下に伴って、慢性的な血清リン濃度の低下が見られる場合に疑われる。腫瘍は非常に小型であることが多く、体内のどこにでも存在し得るため、原因となる腫瘍を発見することは非常に困難である。原因腫瘍が発見できれば、その外科的除去が唯一の決定的治療法になる。原因腫瘍が発見できない場合や完全切除不能例では、リン製剤や活性型ビタミンD製剤による治療が必要となる。現在注目を集めている抗FGF23モノクローナル抗体KRN23は、TIOの原因となる切除不能な腫瘍を有する症例の最も有望な治療法の1つとされている。最近いくつかの腫瘍で、フィブロネクチンと線維芽細胞増殖因子受容体1(FGFR1)との融合分子が、ドライバーとして働くことが同定された。これにより、TIOの病態生理の解明が促進されただけでなく、転写、転座、翻訳後修飾、FGF23分泌促進への理解が深まり、標的療法の開発も検討されている。今後の研究で、転座型でない腫瘍に対するFGFR1経路の影響についても明らかにする必要があるだろう。

PrimeView
腫瘍性骨軟化症(TIO)は、腫瘍からの線維芽細胞増殖因子23分泌によって発症し、低リン血症と骨格異常を特徴とする。TIOの原因腫瘍は、小型の場合が多く、体内のすべての軟組織や骨に発生する可能性があるため、発見するのが困難である。
本Primerの図解サマリー

doi:10.1038/nrdp.2017.44

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