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全身性硬化症における治療標的としての腫瘍増殖因子β

Nature Reviews Rheumatology

2009年4月1日

Transforming growth factor β as a therapeutic target in systemic sclerosis

腫瘍増殖因子β(TGF-β)は、極めて重要な恒常性維持機能を担う多機能なサイトカインである。TGF-β発現の異常は、全身性硬化症(SSc) における線維症の発症機序に関与するとされている。したがってTGF-βは、この疾患に対する分子治療の標的となる。抗TGF-βモノクローナル抗体が、早期SScを対象とした小規模試験で評価されているが、期待はずれな結果に終わっている。しかし、潜在型TGF-βの活性化を妨げる抗αvβ6インテグリン抗体は、前臨床試験で有望な結果を示して いる。TGF-β受容体活性に対する低分子阻害剤は、線維症の動物モデルにおいて有効である。イマチニブメシル酸塩とそれに関連するチロシンキナーゼ阻害剤もTGF-β経路を遮断し、線維化反応を抑制する。TGF-β活性を遮断すると、自発的免疫活性化、上皮過形成、創傷治癒障害が生じる可能性がある。免疫寛容の喪失は、SScなどの自己免疫疾患 において懸念材料となり得る。マイクロアレイを用いた遺伝子発現解析や遺伝子多型の検討によって得られたTGF-βシグナル伝達に関する新たな知見は、抗TGF-β治療が奏効する可能性が最も高い患者の特定に役立つと考えられる。この介入法は、SScの治療に重要な影響を及ぼすことが期待される。有効性と安全性、そしてバイオマーカーによりこれ らを予測することが可能かどうかという懸念、治療の適切な用量とタイミングに関する疑問、さらに、治療が奏効する可能性のある患者の特定が、今後の重要な課題である。

doi:10.1038/nrrheum.2009.26

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