Research Highlights

フィブリンは炎症性疾患治療の有望な治療標的である

Nature Reviews Rheumatology

2008年2月1日

Fibrin is a potential therapeutic target for the treatment of inflammatory disease

トロンビンはフィブリンの重合化に関与し、in vivoでは急性および慢性の炎症過程に関連することが知られている。Flick らは遺伝子操作されたさまざまな マウスモデルを用いて、関節炎の発現と進行におけるフィブリンの役割を検討している。

コラーゲン誘発性関節炎モデルマウスを用いて遺伝子操作でフィブリンを欠損させたところ、疾患の発生率と重症度が低下した。対照マウスでは、炎症のある膝関節でフィブリン沈着が認められ、その沈 着量は関節病変の程度と相関すると考えられた。フィブリンは、疾患早期における関節への白血球輸送に必須ではないが、局所での白血球活性化と、続く二次的な白血球浸潤を助けることが明らかになった。

白血球インテグリンと結合するフィブリンの特徴は関節炎進行に必要であり、コラーゲンに対する免疫能のある遺伝子操作マウスの関節ではαMβ2 インテ グリン結合モチーフが欠損した変異型フィブリンの沈着が確認されたが、 疾患症状はフィブリン欠損マウスと同程度であった。対照マウスと比較してフィブリン欠損マウスおよび白血球αMβ2 インテグリンとの 結合能をもたないフィブリンのみを発現するマウスでは、腫瘍壊死因子、インターロイキン1β、インターロイキン6 の発現が減少した。腫瘍壊死因子の発現量が増加するように遺伝子操作されたマウスは、フィ ブリンの有無にかかわらず関節炎を発現した。

著者らは、フィブリンは局所サイトカイン生成の上流にある白血球介在機序を通して、炎症性疾患を抑制する可能性があると結論づけた。フィブリン-αMβ2 インテグリンの相互作用の遮断は、出血リスクによる不利益をもたらすことなく、関節炎疾患の治療において有益であると考えられる。

doi:10.1038/ncprheum0688

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