Research Highlights

小径線維ニューロパチーにおいてサイトカインは疼痛を引き起こすか

Nature Reviews Neurology

2010年8月1日

Pain Do cytokines cause pain in small-fiber neuropathy?

Neurology に発表されたケース・コントロール研究によると、小径線維ニューロパチー(small fiber neuropathy; SFN)患者の皮膚患部では、前炎症性サ イトカインの発現量が増加しているという。筆頭著者であるドイツWürzburg 大学のNurcan Üçeyler は、「われわれの研究は、この疾患において局所のサイトカインの遺伝子発現が担っている可能性のある病態生理学的役割について検討した初めての試験である」と述べている。

SFN は数多くの代謝性疾患と関連している可能性があり、四肢の突発性の灼熱痛によって特徴づけられ、これは下肢に最も高頻度に発症する。この疾患は、疼痛刺激を感知し、侵害性傷害に関する情報をCNS に 伝達するA-δ 線維およびC 線維に対して特異的に影響を及ぼす。なお、SFN に伴って発現する消耗性の灼熱痛を引き起こす、その根底にある病態生理学的なメカニズムについては、現時点ではよく分かっていな い。

前炎症性サイトカインは主として発痛性であり、これらの多面発現性分子は種々の慢性疼痛疾患における疼痛を引き起こす可能性があることを示唆するエビデンスがある。前炎症性サイトカインがSFN における 疼痛の発現に関与しているかどうかを確かめるため、Üçeyler らは、疼痛部位(遠位腓腹部)および無疼痛部位(近位大腿部)から採取した皮膚生検サンプル中のサイトカインの皮膚発現量を測定した。また、全身のサイトカインの遺伝子発現を評価するため、患者から採取した血液サンプルを分析した。

「われわれの研究で得られた最も重要な知見は、神経線維の長さに依存性を示すSFN 患者において前炎症性サイトカインであるインターロイキン(IL)-6 およびIL-8 の遺伝子発現量が、疼痛患部では[非患部 の皮膚ならびに健康人の皮膚に比して]有意に増加したことである」とÜçeyler は述べている。また、SFN患者では健康人コントロールに比べて、IL-2、IL-10および腫瘍形質転換増殖因子(TGF)- β 1 の全身の遺伝子発現量が約2 倍多いことも明らかにされた。

炎症細胞は、抗炎症性サイトカインおよび前炎症性サイトカインのいずれに関しても重要な供給源である。にもかかわらず、本研究では、マクロファージおよびT リンパ球の数は患部の皮膚および非患部の皮 膚から採取した皮膚生検サンプルでは同じであり、またSFN 患者と対照者でも同じであることが示された。この成績は、皮膚患部におけるサイトカイン発現の増加は、炎症細胞浸潤の程度には関係していないことを示唆している。

Üçeyler らの研究成果は、SFN で損傷されるA-δ線維およびC 線維はアルゴゲン感受性である可能性、また局所の前炎症性サイトカインの増加はこの疾患に関連した疼痛の根底にある原因の一つである可能性を 示唆している。しかしながら、著者らは、「今回の知見を確認し評価するには、より規模の大きい研究を将来的に実施することが必要である」と記している。

研究者らは現在、増加する局所サイトカインの細胞供給源を特定するために、器官培養法を用いた研究の実施を計画している。

doi:10.1038/nrneurol.2010.100

「レビューハイライト」記事一覧へ戻る

プライバシーマーク制度