Research Highlights

粘り甲斐あり

Nature Reviews Cancer

2008年12月1日

It pays to be persistent

免疫系の腫瘍細胞殺傷能力を高めるために用いられてきた戦略に、腫瘍特異的抗原受容体を活性化T細胞(ATC)にex vivo導入し、それを患者に投与するというものがある。しかし、この細胞は、腫瘍細胞による効果的な活性化T細胞の共刺激がないこともあって、in vivoでの生存性および抗腫瘍活性が弱い。このほど、Malcolm Brennerらは、このようなT細胞の共刺激を強化し、おそらくはin vivoでの生存性および抗腫瘍活性を強める方法は、Epstein–Barrウイルス(EBV)に特異的な細胞傷害性Tリンパ球(CTL)に腫瘍特異的抗原受容体を発現させることであると結論付けた。というのも、EBVに特異的なCTLはin vivoで、EBV感染B細胞による広範囲の共刺激を受けるからである。EBV感染率は高く、正常児の約33~50%、神経芽細胞腫患者の約80%、西洋諸国の成人では90%超がウイルスのキャリアである。

Brennerらは、野生型T細胞受容体由来でシグナル伝達を担う細胞内領域と、ほとんどの神経芽細胞腫細胞に存在しジシアロガングリオシドGD2に導かれる抗原結合領域をもつ、キメラ抗原受容体(CAR)を作製した。そして、EBVに持続感染している、再発性または治療不応性の進行性神経芽細胞腫の患者11人に対し、それぞれ、自己ATCおよびEBV特異的CTLにこのCARを導入した。ex vivoでこれらの細胞の特徴を調べたところ、自己EBV+B細胞を殺すのはCAR-ATCではなくCAR-CTLであり、また、CAR-CTLもCAR-ATCもGD2+神経芽細胞を殺すことがわかった。

次に、CAR-CTLおよびCAR-ATCを元の患者に注入して戻し、in vivoでの生存性および抗腫瘍活性を調べた。Brennerらは、in vivoで形質導入細胞の生存を追跡するため、非コード配列のタグをつけたCARベクター2つのうちの1つが発現する細胞を用いた。これにより、PCRで各細胞集団を特定することができる。その結果、注入からわずか24時間後のCAR-CTLからのPCRシグナルは、CAR-ATCよりもはるかに高かった。また、CAR-CTLはin vivoで6週間以上にわたって存続したが、CAR-ATCは3週間目以降、検出されなくなった。さらに注入から4~24週間後に細胞を再度培養したところ、CAR-CTLはEBV+B細胞に反応して増殖し、GD2+神経芽細胞に対する細胞傷害性を維持していることがわかった。

CAR-CTLはin vivoで腫瘍反応を誘導できるのだろうか。今回の試験対象となった患者11例中8例の腫瘍で、その評価が可能であった。このうち4例には、CAR-CTLおよびCAR-ATCの注入後に腫瘍の退縮または壊死の証拠が認められた。1例は完全に退縮し、さらにその状態が1年以上続き、別の1例では腫瘍壊死が引き起こされ、治療から1年後に残存腫瘍が安定化した。そして、最長24カ月間の追跡調査からは、注入した改変T細胞が原因と思われる有害な副作用は認められなかった。

神経芽細胞腫関連抗原が誘導するウイルス特異的CTLの存続性および有効性は、このCTLを用いて神経芽細胞腫を治療できることを示す。つまり、さまざまな腫瘍に対するT細胞を用いた治療法を開発するうえで、このモデルは間違いなく価値があるものである。

doi:10.1038/nrc2554

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