Research Highlights

種子か土壌かの議論

Nature Reviews Cancer

2003年4月1日

癌細胞が転移する可能性は原発性腫瘍にすでに存在するのか、それとも癌細胞が原発巣から離脱した後に転移能を獲得するのかについての議論は継続中だ。Quin-Hai Yeらが実施した遺伝子発現プロファイル解析には、コンピュータ処理による教師付き機械学習アルゴリズムが併用され、前者の説を支持する分子的特徴が得られた。また、この遺伝子発現プロファイル解析を利用し、転移する可能性がある原発性肝細胞癌(HCC)を検出することができる。したがってこの検出法は、転移する可能性が最も 高いHCCの患者を見分けるのに使えるかもしれない。

eらは、30人のHCC患者由来の50検体の原発性または転移HCC標本で発現される遺伝子の組合せ(遺伝子発現プロファイル)を比較した。比較した標本には、転移した腫瘍も転移しなかった腫瘍も含まれている。意外にも、原発性HCCとその腫瘍から転移したHCCの遺伝子発現プロファイルは、それほど違っていなかった。ところが、転移しなかった原発性腫瘍の遺伝子発現プロファイルは、後に転移した原発性 HCCの遺伝子発現プロファイルとはかなり異なっていた。このことは、転移した腫瘍は元の原発性腫瘍と遺伝子発現の特徴が類似しているが、転移しない HCCは転移性原発性HCCとは異なることを意味する。転移する遺伝子の特徴は、腫瘍の大きさや被包の有無、患者の年齢には無関係だった。したがって、転移する可能性は、原発性HCCの段階にすでに決まっているようだ。

の患者のHCCが転移する可能性が最も高いかを正確に予測するのに利用できる遺伝子群を限定するため、Yeらは複合共変量予測法というコンピュータ処理による「教師付き機械学習分類法」を利用した。この解析戦略には予測の正確さの過大評価を避けるための相互確認試験が含まれている。この戦略により、転移しそうな原発性腫瘍の90%が正確に予測され、予測の結果は患者の生存率と相関していた。

は、転移性HCCで発現が増大するのはどんな遺伝子だろうか。分泌型サイトカインのオステオポンチンを指令するOPN遺伝子は、転移性腫瘍では平均して3倍過剰に発現していた。この遺伝子は、転移性乳癌や悪性の肺癌、結腸癌および前立腺癌でも過剰に発現している。HCC細胞系がこのタンパク質を多量に発現していることもわかった。さらにYeらは、ヌードマウスではOPNに対する抗体がHCCの肺転移を阻止できることも示した。OPN発現量の増大は、癌患者の血漿を調べれば検出できるため、治療の標的にするだけでなく、確実な診断の指標にもなるかもしれない。

CCの転移は原発性腫瘍の段階で開始されるというYeらの結果から、ここに示したような解析戦略を用いて転移前の腫瘍患者を見分けることができると考えられる。しかしこの予測法を実施するには、もっと大規模で互いに無関係な複数の観察結果からの確認が待たれる。さらに、この研究のHCC標本はすべて、B 型肝炎ウイルス陽性の中国人患者から得られたものなので、C型肝炎ウイルス関連HCC患者を含む他の集団でこの解析戦略を試してみるべきである。

doi:10.1038/nrc1066

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