Research Highlights

連続的低用量化学療法

Nature Reviews Cancer

2003年1月1日

化学療法剤を低用量で頻繁に投与する治療法〔「時間を延ばした」(high‐time)あるいは「メトロノーム型」投与法とよぶ〕の論理的根拠は、腫瘍の血管系への損傷が 修復される時間を与えないようにして治療効果を上げることにある。論理的には、造血細胞と消化管上皮組織も、化学療法を繰り返す間に回復する時間を奪われ、もっと ひどい損傷を受けるはずである。ところがおもしろいことに、そのような副作用は、少なくとも短期間ならそれほど深刻なものではないようだ。Bocciらが、これについてCancer Research誌上で説明している。Bocciらは、循環系の内皮細胞が連 続的低用量化学療法に対してほかの細胞よりも本質的に感受性が高いことを示したの である。そして、この連続的低用量投与法は、ある種の抗血管新生治療、特に従来の 化学療法剤を用いる治療に最適な薬剤送達法なのではないかと提案している。

occiらは、ヒトの腫瘍細胞、繊維芽細胞および内皮細胞を低濃度の化学療法剤に毎日さらし、6日目まで続けた。これは、患者に適用する連続的メトロノーム型投与法 を模擬した方法である。Bocciらは、10〜100 pM濃度のタキサン(taxane)または1 〜100 nM濃度のシクロホスファミドによって6日後に内皮細胞の増殖が特異的に阻害されることを観察した。この増殖阻害は24時間後では見られなかった。内皮細胞とは対照的に、正常繊維芽細胞と乳癌細胞系の増殖は影響を受けなかった。また、すべての薬剤がこのような差異のある影響を示したわけではなく、たとえばドキソルビシンは、内皮細胞と乳癌細胞の両方に対して類似の抗増殖活性を示した。さらにBocciらは、この処理をした内皮細胞は癌細胞系や繊維芽細胞よりもアポトーシスの度合いが高くなることを観察した。

たがって、いったん薬剤が生体内で効果を示す量に達してしまえば、薬剤にさらされる時間を長くすることが、時間を延ばした化学療法で細胞を殺すのに決定的な意味をもち、内皮細胞に選択的なものかもしれない。このような連続的治療計画表は、抗血管新生治療の糸口となる可能性があり、また、低用量化学療法に用いるまさにその薬に耐性を示す腫瘍の治療、あるいは効き目を減らさずに宿主への毒性を減少させるのに使えるかもしれない。ほかの種類の正常細胞もメトロノーム型投与法に高い感受 性を示すかどうかは今後の研究課題である。

doi:10.1038/nrc981

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