Research Highlights

短報

Nature Reviews Cancer

2002年11月1日

癌抑制遺伝子

癌にかかわる癌抑制遺伝子DBC2

amaguchi, M. et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99, 13647-13652(2002)

BRCA1やBRCA2など、家族性乳癌で変異のある癌抑制遺伝子は以前に同 定されているが、散発性乳癌に対応するものは何だろう。8番染色体短腕21(8p21) がある種の乳癌では欠失しているという発見に引き続き、deleted in breast cancer(DBC2)遺伝子がこの領域からクローニングされた。解析された 乳癌の3.5%で同型接合性の欠失が見られた。乳癌細胞で発現させると、野生 型DBC2は癌細胞の増殖を阻害するが、変異型DBC2は阻害しない。

前立腺癌

リコーム群タンパク質であるEZH2は前立腺癌の進行に関係する

arambally, S. et al. Nature 419, 624-629(2002)

転移性前立腺癌は根本的に不治である。したがって、この段階への進行に関係する遺 伝子を同定するのは重要な仕事である。遺伝子発現プロファイリングにより、ポリコー ムタンパク質であるEZH2(転写抑制物質)がホルモン不応性転移性前立腺癌で過剰発 現していることが明らかになった。限局性前立腺癌における過剰発現でも予後がもっ と悪いことが示され、EZH2は転移性癌のマーカーとなるだけでなく、前立腺癌の進行 にも関与している可能性がある。

血管新生

PARγリガンドは血管新生を阻害し、原発性腫瘍増殖と転移を妨げる

anigrahy, D. et al. J. Clin. Invest. 110, 923-932(2002)

PPARγ核内受容体は、癌細胞の増殖や分化を阻害することが知られている。Dipak Panigraphyらは今回、腫瘍周辺の内皮細胞でこの発現が高いことを報告している。

PARγリガンドであるロシグリタゾンが、VEGF生成を減らして血管新生を阻害するこ とにより、原発性腫瘍増殖と転移を抑制することが明らかにされた。PPARγリガンド は血管新生の阻害によって、有用な抗癌治療法となりうる。

アポトーシス

53によるBID制御は化学受容性に寄与する

ax, J. K. et al. Nature Cell Biol. 4, 842-849(2002)

癌細胞に対する化学療法では、細胞がアポトーシスに至るまでそのDNAに損傷を与え る。転写制御因子であり癌抑制物質であるp53がこの反応を仲介するが、これにかか わる標的遺伝子群は完全には解明されていない。Wafik El-Deiryらは前アポトーシス 遺伝子BID(BCL2ファミリーの1つ)がγ線照射により発現が増大し、Bid欠失 マウスが化学療法剤アドリアマイシンに抵抗性を示すことを明らかにした。したがっ て、BIDはp53応答性化学受容性遺伝子である。

doi:10.1038/nrc942

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