Research Highlights

サイクリンGの居場所

Nature Reviews Cancer

2002年6月1日

サイクリンGは、p53が転写を調節する標的として最初に発見されたタンパク質の1つだが、ちょっと変わっている。サイクリンGは、ありふれたふつうのサイクリンのように見えるが、類縁のサイクリンとは違ってキナーゼを活性化するように見えない。それにもかかわらず、サイクリンGが細胞増殖を促進することを示す証拠はたくさんある。では、サイクリンGはどうやって細胞増殖を促進するのか。今回Koji Okamotoらが、サイクリンGはキナーゼを活性化しないが、ホスファターゼを活性化することを見いだし、p53を調節する新しいしくみがわかってきた。

kamotoらは、以前にサイクリンG結合タンパク質の探索を終えた時点で、サイクリンGがプロテインホスファターゼ2A(PP2A)のサブユニットの一部に結合することを見つけていた。PP2Aは三量体構造をしたセリン/トレオニンホスファターゼで、触媒活性をもつAサブユニット、足場機能をもつらしいCサブユニット、調節機能をもつBサブユニットの3つの亜型(B、B′、B″)のうちのどれか1つから成る。サイクリンGはB′サブユニットに特異的に結合するが、機能をもつPP2A酵素に結合できるのだろうか。Okamotoらは、サイクリンG分子およびB′サブユニットをもつPP2A分子の表面にエピトープのタグをつけ、細胞内でともに発現させたのち、密度勾配を利用して細胞抽出液を分離した。すると、サイクリンGは、PP2Aの3つのサブユニットを全部含む画分のみに見いだされた。そして、サイクリンGに対する抗体を用い、この抽出液からホスファターゼ活性を免疫沈降させることができた。さらに、内在的に発現されるサイクリンGは、プロテインホスファターゼ活性と結びついていた。

る状況下では、サイクリンGはp53のもう1つの標的であるMdm2とも一緒に局在していて、細胞に導入したサイクリンGの約10%は、Mdm2とともに免疫沈降させることができた。この相互作用は、精製標品または試験管内で翻訳されたサイクリンGおよびMdm2を用いて試験管内で再現された。サイクリンGは、PP2AによるMdm2の脱リン酸を促進するのだろうか。これを調べるためOkamotoらは、216位のトレオニン(T216)でMdm2がリン酸化されると、SMP14というMdm2特異的抗体によるMdm2の識別が妨げられるという事実を利用した。サイクリン‐A‐CDK2によってT216 でリン酸化されたMdm2は、サイクリンGとPP2Aホロ酵素の両方が存在すると容易に脱リン酸された(SMP14に対する親和性の上昇で測定)が、どちらか一方が単独で存在する場合は脱リン酸されなかった。また、B′サブユニットの代わりにBサブユニットをもつPP2Aの存在下では脱リン酸されなかった。

たがってサイクリンGは、PP2Aを標的のMdm2に向かわせるようだ。ところで、PP2AによるMdm2の脱リン酸化は、Mdm2のp53抑制能を変化させ、p53をプロテアソームによる分解の標的にするのだろうか。サイクリンG遺伝子欠損細胞では、p53の細胞内濃度が顕著に上昇し、Mdm2は比較的高度にリン酸化されていた。この細胞に低濃度のサイクリンGを発現させると、p53に結合したMdm2の量が増加した。矛盾しているが、高濃度のサイクリンGを発現させると逆の効果を示した。

上の結果から、p53は、Mdm2とサイクリンGの両方の転写を活性化することにより、2段階の負のフィードバック・ループを動かしている。Mdm2の細胞内濃度が増加するとp53応答のスイッチが切れるが、スイッチが切れるのはMdm2が低リン酸化状態にある場合だけである(図参照)。興味をそそられることに、Snorri Thorgeirsson研究室(米国メリーランド州ベセスタにある国立癌研究所)のMicheal Jensenは、サイクリンG1遺伝子欠損マウスに強力な肝臓発癌物質を投与した場合に発生する腫瘍は野生型マウスよりも少なく、小さくて侵略的でないことを見いだしている(未発表データ)。サイクリンGとPP2Aは、特にMdm2の過剰発現によって引き起こされる癌の治療に有効な標的になるかもしれない。

doi:10.1038/nrc828

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