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Nature Reviews Cancer

2004年5月1日

BRAF の変異はヒトメラノーマに一般的で、RASミERK経路を過度に活性化して腫瘍細胞増殖を促進する。Richard MaraisとDavid BarfordらはCellで、キナーゼ活性の低いBRAF変異体にも、RAFファミリーのほかの因子との相互作用による発癌作用があると報告している。

BRAFはMEKをリン酸化することで下流のシグナル伝達を開始させ、最終的にはERKを活性化する。ほとんどの癌関連BRAF変異は、キナーゼドメインの残基に影響を及ぼすため、触媒活性の大きいことが発癌の原因であることがわかる。MaraisとBarfordらはこのことを確認するべく、BRAF変異体22種(いずれもヒトの癌で発現する)のERK活性化能を明らかにした。 1種を除くすべてが上流のシグナルの不在下でERK活性を刺激し、案の定、大半の基礎キナーゼ活性が野生型BRAFを上回っていた。ただし、キナーゼ活性が低いにもかかわらずERKを活性化できる変異体が3種あったことには興味がもたれる。

それでは、キナーゼが損なわれたBRAF変異体は、どのようにして下流のシグナル伝達を刺激するのだろうか。野生型BRAFは、CRAF(同様にERKを活性化できる関連タンパク質)と複合体を形成することが知られている。このため MaraisとBarfordらは、BRAF変異体がキナーゼ活性とは無関係にCRAFを介して発癌作用を発揮できるかどうかを検討した。キナーゼが損なわれてもERKを活性化できる上記変異体3種はいずれも、CRAFと複合体を形成してERKを活性化させていることがわかった。RNA干渉法によって CRAF値を低下させると、上記BRAF変異体のERK活性化能が低下したことから、その発癌活性はCRAFとの相互作用を介していることが裏付けられた。

上記変異体がどのようにしてCRAFを活性化させるのかは不明である。この変異体はいずれも、キナーゼドメインの残基が変化しており、そのためにこの領域に配座の変化が起こりかねない。MaraisとBarfordらは、このような変化がCRAFキナーゼドメインに伝達されることで活性化が起こるのではないかとしているが、これを裏付けるにはさらに研究を重ねる必要がある。

doi:10.1038/nrc1347

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