Research Highlights

抗アポトーシス薬が有望

Nature Reviews Cancer

2004年5月1日

癌患者に抗アポトーシス因子を標的としたphenoxodiol (Marshall Edwards Inc)を投与する期待の早期臨床試験の成績が、2004年3月30日、米国癌学会(AACR)の年次会で報告された。

AKT経路を通じてシグナルを伝達するスフィンゴシンキナーゼは、カスパーゼ活性を遮断し、カスパーゼが引き金になるアポトーシスを妨げるタンパク質のX 染色体連鎖性アポトーシス阻害因子(XIAP)およびFLICE阻害タンパク質(FLIP)を活性化して、細胞の生存を調節する。癌細胞のスフィンゴシンキナーゼ活性は極めて高い。Phenoxodiolは新規イソフラボンで、スフィンゴシンキナーゼの調節因子を標的とするため、細胞からXIAPおよび FLIPが奪われ、その結果、癌細胞がアポトーシスを起こすと考えられている。

オーストラリアおよび米国で実施中の第Ib/IIa相試験には、これまでに前立腺特異抗原(PSA)値の上昇がみられるホルモン不応性前立腺癌患者24例が組み入れられている。Graham KellyがAACRの最新セッションで行った中間報告によると、経口phenoxodiol には生物学的活性があり、PSAに対して用量依存的な作用が認められた。最高用量を投与した患者12例中6例では、PSA値が50%を超えて低下した。毒性は報告されていない。次の段階では、前立腺癌に対してphenoxodiolをタキサンと併用することになっている。

エール大学で実施された第II相試験では、不応性の後期卵巣癌患者40例で単剤療法としてのphenoxodiolの活性が示されている。被験者には、平均で5種類の化学療法が無効であった。40例中10例には、治療開始から6週間後に血中CA125濃度の低下ないし安定化または臨床状態の改善がみられ、反応ありとされた。しかも、この薬剤は忍容性にすぐれていた。phenoxodiol投与後に進行した10例に対してその後、標準治療薬パクリタキセルを再投与したところ、10例中8例にCA125値が平均64%低下するという反応がみられた。このうち4例は以前、パクリタキセル抵抗性または不応性と考えられていたため、このデータからphenoxodiolが化学増感剤であることがわかる。腫瘍の反応はまだ評価されていない。

また別の前臨床試験の報告では、phenoxodiolが化学増感剤として作用しうるという臨床所見が裏付けられている。本薬剤は、白金製剤および代謝拮抗薬ゲムシタビンに対する卵巣癌細胞の感受性を修復した。卵巣癌細胞をphenoxodiolで前処理すると、化学療法薬に対する感受性が100倍を超えて増加した。

この会社は引き続き、早期癌に対しては単剤での第一選択薬、後期癌に対しては第一選択薬のほか化学増感剤として用いる第二選択薬として、phenoxodiolの臨床試験を行っている。

doi:10.1038/nrc1356

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