Research Highlights

PUMA効果

Nature Reviews Cancer

2004年7月1日

p53が調節するPUMAは、BCL2ファミリーのアポトーシス誘導タンパク質であり、p53によって活性化されるアポトーシスに必要となることがある。しかし、腫瘍発生を予防する役割もあるのかどうかは不明である。Scott Loweらは現在、特異的癌遺伝子に対するp53の腫瘍抑制にはPUMAが必要であることを明らかにしている。

PUMAは、マウス胚線維芽細胞(MEF)でp53が活性化する細胞死にきわめて重要であることから、この細胞のp53による腫瘍抑制にも必要であることがわかる。Loweらはこのことを明らかにするため、Puma発現の消失が、癌遺伝子RasおよびE1aを発現するMEFにみられるp53不在下での腫瘍形成の拡大を模倣するかどうかを検討した。Loweらは、RNA干渉法を用いて、Puma特異的なヘアピン構造の短いRNA (shRNA)をレトロウイルスベクターから発現させ、遺伝子発現を持続的に阻害した。Puma shRNAのほか、RasのみまたはRasとE1aをともに発現するMEFをマウスに注入した。 細胞が両癌遺伝子を発現した場合、PUMAの発現を阻害することによって、腫瘍形成レベルが(p53を欠失する細胞と同程度まで)高くなったが、対照レトロウイルスを導入した細胞に、腫瘍形成はみられなかった。しかし、Rasのみを発現する細胞については、Pumaの発現を遮断しても腫瘍形成を促進しなかった。このことから、PUMAはRas およびE1aの同時発現に対するp53の腫瘍抑制には必要であるが、Rasのみに対するものには不可欠とはいえない。

PUMAが腫瘍抑制に必要となる癌遺伝子はほかにもあるのだろうか。E -Myc 造血幹細胞(HSC)は、免疫グロブリン重鎖プロモーターの制御下でMycを発現するため、これをマウスに注入するとB細胞リンパ腫となる。RNAiによってp53発現を阻害すると、このリンパ腫形成が加速される。Loweらは、 PUMAの発現を遮断して同じ作用がみられるかどうかを検討した。対照のレトロウイルスを有する細胞を注入したマウスのリンパ腫発生率は40%であったが、Puma shRNAを発現するE -Myc HSCを注入したマウスはみなリンパ腫となった。p53を阻害して起こる作用と同じく、PUMAを発現しない細胞も高速でリンパ腫を形成する。LoweらがマウスにPuma shRNAを発現する野生型HSCを注入したところ、リンパ腫が発生したのは1/6にとどまり、PUMAの阻害とMyc の発現が同時に起こると、腫瘍形成が助長されることが確認された。

以上のことから、PUMAは、Mycが発現する、またはE1AとRASとが同時に発現するなどの場合には腫瘍形成の抑制に必要となるが、RASのみが発現するなどの場合には必要とはいえない。さらに研究を重ねれば、さまざまな癌の治療におけるこの重要な経路の操作性に及ぼす影響も含め、p53の種々ターゲットが特異的な癌遺伝子の刺激を受けてどのように腫瘍抑制に寄与しているかについての理解が深まるはずである。

doi:10.1038/nrc1403

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