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HELICOBACTER PYLORI CAGAタンパク質の発癌機序

Nature Reviews Cancer

2004年9月1日

抄録

細胞空胞化毒素関連蛋白A (cagA)遺伝子をもつHelicobacter pylori株に感染すると、胃癌が生じる。最近の研究により、cagA遺伝子産物CagAが、病態生理学的作用を誘発する機序が解明された。CagAは、pylori菌のIV型分泌系によって胃上皮細胞に送達され、そこで SHP2腫瘍性タンパク質を統制から解除する。 興味深いことにCagAには、特にSHP2結合部位に変異型があることが知られており、これがさまざまなH. pylori株が胃癌発生を促進する可能性に影響を及ぼしうる。

要約

世界的にみると、癌による死因の第2位が胃癌である。細胞空胞化毒素関連蛋白A (cagA)遺伝子をもつHelicobacter pyloriの慢性感染が、胃癌の原因となっている。

cagA遺伝子産物CagAは、pylori菌のIV型分泌系によって胃上皮細胞に送達され、SRCファミリーキナーゼによるチロシンリン酸化を受ける。チロシンリン酸化はCagA のEPIYAモチーフで起こる。

リン酸化したCagAは、ヒト腫瘍性蛋白として作用することが初めて確認されたホスファターゼであるSHP2と特異的に結合してこれを活性化する。

SHP2は細胞増殖および細胞運動に対して正のシグナルを伝達することから、CagAによるSHP2の統制解除は、cagA陽性H. pyloriが胃癌を助長する機序として重要である。

CagAは、SHP2結合部位に変異があることで知られており、配列変異に基づき、主に東アジア型CagAおよび西欧型Cagの2種類に分けられる。東アジア型CagAは、西欧型CagAよりもSHP2結合が強く、生物活性が大きい。

東アジア諸国で胃癌の発生率が高いことの根底には、生物活性型のCagAを有するH. pylori株の地方病性伝播があるものと考えられる。

doi:10.1038/fake841

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