Research Highlights

規制緩和は必要?

Nature Reviews Cancer

2004年10月1日

癌患者の血中には、腫瘍関連抗原を認識するT細胞が検出可能数存在するが、これに見合って効果的に腫瘍が根絶されることは、たとえ細胞傷害性T細胞の数が腫瘍ワクチンによって増大しても稀である。Curielらは現在、制御性T細胞が効果的な抗腫瘍反応を妨げる一因である可能性を示している。

最近の諸試験から、自己認識するT細胞が存在すれば、制御性T細胞が活性化して抗癌反応をシャットダウンすることがわかっている。Curielらは、進行卵巣癌患者の腫瘍関連T細胞のプロフィールを検討し、腫瘍性腹水から単離したT細胞の10%〜17%が制御性T細胞(CD4+CD25+)であることを突き止めた。さらに、腫瘍組織そのものにおいて同定されたT細胞の約23%が、制御性 T細胞のサブタイプであり、その割合は進行度に応じて増大していた。ところが、正常な卵巣組織切片には制御性T細胞が認められなかった。

では、制御性T細胞が抗癌免疫応答に及ぼす作用とは何だろうか。Curielらは、卵巣癌のマウス異種移植モデルを用いて、ヒト腫瘍性腹水から単離した制御性T細胞が、自己腫瘍特異的な細胞傷害性T細胞の増殖を阻害することを明らかにした。さらに、腫瘍特異的細胞傷害性T細胞の注入によって、腫瘍の増殖は緩徐化したが、制御性T細胞を同時に注入すると、この作用は阻害された。

何が制御性T細胞を腫瘍組織に引き寄せているのだろうか。制御性T細胞は通常、リンパ節にあるが、驚くべきことに所属リンパ節に存在する制御性T細胞は、癌のない患者のリンパ節よりも少なかったのである。実際、癌の進行に伴ってリンパ節の制御性T細胞レベルが低下し、腫瘍組織および腫瘍性腹水内のレベルが上昇することから、制御性T細胞は、腫瘍が産生する走化性因子によってリンパ節から活発に動員されていることがわかる。Curielらは、数多くのケモカイン候補を吟味し、マクロファージからも腫瘍細胞からも産生されるCCL22が、 CCL22受容体CCR4を発現する制御性T細胞を引き寄せていることを明らかにした。異種移植モデルでは、CCL22に対する抗体が制御性T細胞のヒト卵巣癌への輸送を妨げた。

最後に、Curielらは、制御性T細胞数と患者予後とを相関させ、卵巣癌患者70 例を見直すことにより、予後は病期に関係なく、腫瘍関連の制御性T細胞数が多いほど不良となることを確認している。そして、制御性T細胞の機能を阻害する、または腫瘍ケモカインシグナル伝達を遮断してその遊走を阻害することによって、多くの腫瘍ワクチンの有効性が改善されるのではないか、との結論に達している。

doi:10.1038/nrc1468

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