Research Highlights

つかの間の出会い

Nature Reviews Cancer

2005年1月1日

前臨床試験でも臨床試験でも、放射線治療または化学療法のいずれかと併用すると、充実性腫瘍の血液供給を途絶させる抗癌治療が最も効果的であることが示されている。Jainらは現在、このような結果に考えられる理由を明らかにしているが、なんと、抗血管新生因子は腫瘍の血管系を根絶させるのではなく、むしろそれを一時的に改善しているのではないかという。

充実性腫瘍を栄養する血管網は、かなり混乱した過度に大きな漏出性の血管が集まっていることが多いために十分な血液が供給されず、ほとんどの場合、腫瘍組織が低酸素状態に陥る。多形神経膠芽細胞種などの充実性腫瘍の放射線治療は、こうした低酸素状態の妨害に遭う。Jainらは、ヒト神経膠芽細胞種の同所性マウスモデルを用いて、抗血管新生治療と放射線治療とを併用する方がよい結果が得られる理由を評価した。

Jainらは当初、血管内皮増殖因子受容体2 (VEGFR2)を阻害する抗体(DC101)と放射線とを併用して、腫瘍増殖を検討した。両治療法を併用すると、腫瘍増殖の鈍化に相加作用がみられたが、DC101治療開始から4〜6日後に放射線治療を実施したところ、相乗作用が認められた。しかし、放射線治療をDC101治療開始から8日遅らせると、この相乗作用は消失した。Jainらはこれについて、血管網の一時的な改善により、腫瘍の酸素化レベルが上昇して、放射線に対する腫瘍細胞の感受性が高まったのではないかと考えた。

in vivo多光子顕微鏡および蛍光抗体法を用いて腫瘍を分析したところ、DC101による治療の初期段階でこの腫瘍の血管系が変化(すなわち、血管の蛇行性が低下し、血管径が減少)していたことがわかった。こうした変化は、腫瘍血管への周細胞(正常組織では血管の安定化に関連する細胞)の動員と相関していた。mRNAおよびタンパク質の試験と併せてcDNAマイクロアレイデータをみると、DC101 での治療によりアンジオポエチン-1の発現が選択的に増大し、アンジオポエチン-1受容体TIE2を阻害すると、周細胞の動員が遮断されることがわかる。さらにJainらは、腫瘍血管に多くみられる基底膜の異常な肥厚が、一時的に減少することを突き止めた。これは周細胞動員の機能ではなく、増大したマトリックスメタロプロテアーゼ活性の機能である。

以上をまとめると、上記の結果からは、VEGFR2を一時的に遮断すると、腫瘍の血管網が「正常化」して低酸素状態が改善され、放射線治療の効果が上がることがわかる。患者の正常化の窓を特定することが、多形神経膠芽細胞種をはじめとする充実性腫瘍に対するさらに効果的な治療につながるのではないかと思われる。

doi:10.1038/nrc1541

「レビューハイライト」記事一覧へ戻る

プライバシーマーク制度